神奈川・湘南で23年にわたり営業を続けるかき氷店「埜庵」は、多いときで7時間待ち、真冬にも行列ができる人気店だ。しかし、長い間まったく儲からなかったという。
自家製シロップへの徹底したこだわり
埜庵のかき氷を象徴するのは、生のフルーツから作る自家製シロップだ。いちご、パイナップル、メロン、すいか、桃、レモン、マンゴーなど、季節のフルーツをなるべくそのままの美味しさで届けるため、加工方法を日々工夫している。
シロップ作りは創業以来、石附さんが担当。基本として美味しいフルーツを使うが、「美味しい果物は人が手を加えてそれ以上に美味しくなることはない」と石附さんは言う。そこで埜庵ではフルーツの味を一度分解し、酸味や渋みといった甘味と逆の味を加えることで、より本物に近い味わいに再構築する。
さらに、季節によって削り方や積み方、シロップの作り方も変えている。シロップは糖度、濃度、粘度、温度の4つの度数で設計。夏はサラッとした清涼感で、溶けて飲んでも美味しいドリンクのようなシロップに。冬は濃度と粘度を上げて味が強く残るスイーツとし、食べ応えを演出する。
抹茶にもこだわり
もう一つのこだわりが抹茶だ。埜庵では愛知県西尾市の葵製茶で、かき氷用に特別にブレンドしたオリジナル抹茶を使用している。代表的なメニュー「抹茶金時」は1500円で、かき氷の中にあずきが入り、練乳をかけて味わう。
行列ができることが必ずしも喜ばしいことばかりではないという矛盾を抱えながらも、品質へのこだわりを貫いた23年の歴史が、今の埜庵を支えている。



