若桜に本とそばの店「鳥の巣」 Uターン夫婦が開店、古民家で再出発
若桜に本とそばの店「鳥の巣」 Uターン夫婦が開店

若桜鉄道の若桜駅から少し歩くと、古民家が連なる風情のある通りに出る。その一角に今春オープンしたのが「本とそば 鳥の巣」だ。東京から戻りたいと願っていた夫と、本屋を開くことが夢だった妻が、それぞれの思いを込めた店で、地域に新たな人の流れを生み出そうとしている。

東京から若桜へ、夫婦の移住

鳥取市出身の店主、小浜雄史さん(27)は大学卒業後、県内のIT企業に就職した。のんびりとした鳥取の空気が好きで、「ずっといよう」と思っていたが、研修後に告げられた配属先は東京だった。そこで出会って結婚した妻の奈央さん(28)は大の本好きで、本屋という空間そのものに心地よさを感じていた。

大都会で働き続ける中、雄史さんの「いつか鳥取に帰りたい」という思いは消えなかった。横浜市出身の奈央さんも「都会での暮らしに疲弊していた」という。夢の本屋を開業しようにも、初期費用や運営費を考えれば東京では難しい。「鳥取だったらできるのでは」と、2人は2022年頃から計画を練り始めた。

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そば屋と本屋、二つの夢を実現

本屋だけでは経営が厳しいと考え、ブックカフェのような飲食店との併設を検討。そんな時に見つけたのが、雄史さんの父親の実家がある若桜町で、そば屋の開業を目指す地域おこし協力隊の募集だった。「カフェよりも、そばの方が地域の人に利用してもらえそう」と、24年1月に採用の通知を受け、夫婦で仕事を辞めて若桜町に移住した。

雄史さんにそば打ちの経験はなかったが、24年12月から1年間、鳥取市内のそば屋で週3回手伝い、基本的な技術を身に付けた。店長が不在の日には自らそばを打ち、客に提供できるほど上達した。一方、奈央さんは町の商工会が運営・管理する古民家で、24年10月に本屋「鳥の巣」を先行開店。しかし、「商売を成り立たせる仕組みを考えることが難しかった」と振り返り、1年半で店を畳み、今年4月に「本とそば 鳥の巣」として別の古民家で再出発した。

若桜の魅力を発信する店

店の戸を引くと、そば屋のカウンターが目に入る。奥のスペースが本屋で、木製の机に新刊本を置き、後ろの棚に古本を並べる。そば屋と本屋は自由に行き来でき、通り沿いでも車の往来が少ないため、静かで落ち着く。

そばは若桜町産のそば粉や特産の鹿肉を使ったメニューを提供し、本は約450冊を取りそろえる。新刊本はエッセーや紀行文があり、夫婦それぞれが選んで店頭に並べる。奈央さんは「鳥取や若桜の魅力を感じられる本を置きたい。本に癒やされ、生きる力をもらえる場所になれば」と意気込む。

店内が満員になった際には、本屋が待合室となり、待つ間、古本に限って読めるようにするなど、本とそばを組み合わせた店ならではの工夫も凝らしている。「若桜を好きになる人、本を好きになる人が増えてくれたらうれしい」と、夫婦の挑戦は始まったばかりだ。

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