波が高く、船は大きく揺れていた。船酔いの兆候が出始めた矢先、帰港が決まり、ほっとした。陸に戻ると、船長は「今日は今年一番釣れませんでした」と嘆いた。「普通はもっと釣れるので、こりずにまたきてくださいね」と付け加えた。
船長の言葉に、私とM、Hさんは「はい、リベンジしたいです」と口をそろえたが、ミカンは複雑な表情を浮かべていた。ミカンが唯一釣り上げた小さなイワシはバケツから逃げ出し、結局、じゃんけんで獲得したアジ1匹だけが釣果だったからだ。素人の場合、釣りは釣れてこそ楽しいという真理がある。釣れなかったミカンは「もうええわ!」と不貞腐れ気味だった。
釣りたてアジの味とお値段
クーラーボックスに全員分の釣果を入れ、予約した居酒屋へ向かった。釣りたてのアジとイワシを調理してもらい、祝杯を上げた。「今度は、アジ以外の魚釣りに行きたいな」と私が言うと、ミカンは「私は陸で待ってる」と苦笑いした。しかし、スーパーで買った魚とはまったく違うコリコリの歯応えの刺身と、彼女が大好きな銘柄の冷えたビールで、すぐにご機嫌になった。
終盤に出されたアジフライは、身は小さいながら絶品だった。とはいえ、このアジフライを食べるために払った料金は、釣り代4500円と調理代2000円の合計6500円。アジのフルコースとしては少々高く感じられた。
子どもの頃の楽しさは通用するか
50代、人生後半の生きがいを探して、子どもの頃に夢中になったアジ釣りに再挑戦した漫画家の倉田真由美。しかし、現実は甘くなかった。船酔い、貧果、割高な費用……。子どもの頃の楽しい経験が、人生後半でもそのまま通用するとは限らない。それでも、釣りたてのアジの刺身やアジフライの味は格別で、仲間との時間はかけがえのないものだった。趣味の再発見は、思い通りにいかないこともあるが、新たな気づきをもたらしてくれる。



