映画「私はあなたを知らない」(日仏共同制作)が新宿ピカデリーなどで公開中だ。監督は「湯を沸かすほどの熱い愛」などで知られる中野量太氏。本作は商業用長編デビュー作以来となるオリジナル脚本で、家族をテーマにした巧みなストーリーテリングが光る。
孤独な青年が出会った疑似家族
天涯孤独の青年・夕平(坂口健太郎)は、東京の片隅のアパートで同じような一日を繰り返している。働くゴム手袋工場に明るく元気な紗月(堀田真由)が入社してきたことで、彼の淡々とした毎日が輝き出す。互いに親近感を覚えた2人は、夕平が紗月の家を訪れると5歳の娘・朝子を紹介される。紗月はシングルマザーだった。
思わぬきっかけで「家族」の一員となった夕平の幸せな日々が描かれるが、その幸せにのめり込みすぎたことからすれ違いが始まり、悲劇につながっていく。夕平は罪を犯し、収監される。
単純な「悪」ではない物語
物語は夕平を単純な「悪」として片付けない。家族の形を守ろうとしているのに、目指すものが違うからズレが生まれてしまう。愛ゆえの過ちとも言える状況は特殊だが、誰にでも起こりうることかもしれない――と語りかけるような中野監督の物語が光る。
この人間ドラマをサスペンス的に仕立てているのも特徴だ。謎解きのように夕平と紗月の思いが解きほぐされていく。重い話だが、不思議と気持ちよさがある。
作品情報
「私はあなたを知らない」(日、仏)は新宿ピカデリーなどで公開中。上映時間は2時間6分。



