異色経歴のピアニスト三浦謙司さん、9月20日に神戸で凱旋リサイタル
異色経歴のピアニスト三浦謙司さん、神戸で凱旋リサイタル

神戸市出身のピアニスト・三浦謙司さんが9月20日、西神中央ホール(神戸市西区)でリサイタルを開催する。ドイツの名門芸術大学を中退後、県内で工場やパチンコ店など職を転々とした異色の経歴を持ち、2019年に最難関の国際コンクールで優勝した注目株だ。凱旋帰国に「神戸は特別な場所」と意気込んでいる。

独名門大を中退し、様々な職を経験

三浦さんは1993年に神戸市で生まれ、4歳でピアノを始めた。小学4年から家族の仕事の都合で中東で暮らした国際派でもある。ピアニストになることを決意して中学で単身渡英し、その後、ドイツの名門・ベルリン芸術大学に入るが、エリート教育に疑問を持った。

「ずっとピアノの猛練習ばかりやって同じような人たちに囲まれ、整えられた環境にいる」と気づき、「人として様々な経験をしない中で、エスカレーター式のように演奏家になって、聴き手に一体、何を伝えられるんだろう……」と自問。ピアニストは作曲家のあらゆる喜怒哀楽や死生観が込められた曲を再現する役割を担うが、その問いに答えられず19歳で中退した。

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故郷の神戸に戻り、アパートで一人暮らしを始めた三浦さんは、液晶パネルの製造工場やパチンコ店の店員、菓子の販売や引っ越し業、警備員など多様な職を転々とした。ある時は十数時間にも及ぶ立ち仕事で熱中症寸前になり、バイクのエンジンケースを作る工場では鉄の破片が足に刺さり、手にやけども負って労働の厳しさを思い知らされた。

友人の死を機に音楽へ回帰

ピアノに触れない生活を送りながら生き方を模索していたある日、英国時代の大切な友人を20歳の若さで亡くした。寝込むほどの衝撃を受け、自分の道を再び問い直し、「人間は、いつ死ぬのか分からない。何者にも奪われずに自分の中にあるのは『音』で、今、向き合う価値があるのは、やっぱり音楽だ」と感じた。中退から約1年で再びピアノに向き合う気持ちが湧いてきた。

その後、猛練習の末にドイツのハンス・アイスラー音楽大学に入学。浜松国際コンクールなどに次々と入賞して注目を浴び、2019年には若手の登竜門で最難関のフランス「ロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクール」で優勝した。試行錯誤の歩みを振り返りながら、「中退する前は子どもだった。作曲家の人生観や音楽の深みをくみ取れる大人になった実感がある」と語る。

凱旋公演でシューマンやベートーベンを演奏

世界的ピアニストのマルタ・アルゲリッチ氏から「繊細さの中に、強い意志が感じられる」などと称賛された三浦さん。公演では、その持ち味を生かしたシューマンの「子供の情景」やベートーベンの「ピアノ・ソナタ第23番『熱情』」を演奏する。「確かに自分はここに生きていたんだ、と実感する神戸。自然と心が動くのを受け止めながら演奏したい」と話す。

公演は午後3時開演。問い合わせは西神中央ホール(078・995・5638)へ。

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