第175回直木三十五賞の選考会が15日、都内で行われ、朝倉かすみ氏の『けんぐゎい』(光文社)が受賞作に選ばれた。発表後、Zoomを通じて行われた選考委員による講評では、辻村深月氏が候補作の一つである若林正恭氏の初小説『青天』(文藝春秋)について熱く語る場面があった。
辻村深月が語る『青天』の魅力
辻村氏は同書について「大変のびやかな小説で、光る表現がとても多くありました。『空』という表現で体言止めになっていたり、いい形の文章がたくさんあって、いい意味で計算をしていない、身体性を伴うものがあった」と絶賛。その上で「とても高評価だったのですが、受賞できなかったのは、初めての小説ということで、この先にさらにどんなものを書かれるのか見てみたいという声が多くありました」と、今後の成長への期待から受賞を見送った経緯を明かした。
続けて辻村氏は「時代が1999年を舞台にしたアメフト部ということで、現代の読者に届けることに解像度が高く、そちらを美点とみて、その時の風土が伝わってきて面白いという声がありました。一方で、現代の読者に送り出す時に、より普遍性が高いものとして、若林さんが次に何を書くのか見てみたいという意見があった」と、選考委員の間で交わされた議論を紹介した。
若林正恭の執筆活動と受賞歴
お笑いコンビ・オードリーの若林正恭氏は、2013年に初のエッセイ集『社会人大学人見知り学部 卒業見込』を刊行。その後、2018年にキューバ旅行を綴った『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』で斎藤茂太賞を受賞。さらに3冊目のエッセイ集『ナナメの夕暮れ』は累計発行部数42万部を突破するなど、作家としても大きな注目を集めてきた。
第175回直木賞の候補作と選考委員
今回の直木賞候補は、朝倉かすみ『けんぐゎい』、蝉谷めぐ実『見えるか保己一』、凪良ゆう『多類婚姻譚』、原田ひ香『#台所のあるところ』、若林正恭『青天』の5作品。65歳の朝倉氏は3回目、53歳の凪良氏は2回目、33歳の蝉谷氏、56歳の原田氏、47歳の若林氏は初めての候補入りだった。
選考委員は直木賞が浅田次郎、角田光代、京極夏彦、桐野夏生、辻村深月、林真理子、三浦しをん、宮部みゆき、米澤穂信の各氏。
『青天』のあらすじ
『青天』の舞台は1999年。総大三高の「アリ」こと中村昴が所属するアメフト部は万年2回戦止まり。相手校の練習を隠し撮りして臨んだ高校3年生の引退大会では、強豪・遼西学園に敗れる。引退後、受験勉強に身が入らず、不良になる覚悟もないまま宙ぶらりんの日々を過ごす中で、アリは自らの不甲斐なさと向き合い、再びアメフトに挑む決意を固める。タイトルの「青天」はアメリカンフットボール用語で、試合中に仰向けに倒されることを意味する。



