俳優の池松壮亮が主演する映画『開戦前夜』(31日公開)の製作委員会は22日までに公式サイトを更新し、創作の経緯と公開についての声明を発表した。
本作は、NHKスペシャルのドラマパートを再構成し、新たなシーンを加えた138分の完全版。1941年、日米戦争開戦前夜を舞台に、「日本必敗」と結論づけた総力戦研究所の若きエリートたちの姿を描く。主演の池松壮亮をはじめ、仲野太賀、岩田剛典、中村蒼、三浦貴大、國村隼、佐藤隆太、江口洋介、佐藤浩市らが共演する。
本作を巡っては、2025年放送のNHKスペシャルのドラマパートに登場する「板倉大道少将」の描写について、実在の人物の遺族側が名誉毀損などを理由に提訴しており、現在も係争中。19日に予定されたプレミア上映会は、試写会会場付近で行われた本作への批判活動を受け、来場者や登壇者への影響を考慮して中止となった。
声明の全文
映画『開戦前夜』製作委員会は声明で、以下のように説明している。
テレビドラマ版に関する訴訟の原告は、本作を「故人の名誉毀損」「歴史捏造」「史実歪曲」などと批判し、公開阻止を繰り返し公言。試写会では会場前の公道で拡声器を用いた演説も行った。しかし、製作委員会は「本作に飯村穣氏は登場しない」と強調。原告が「板倉大道少将」を飯村穣氏と断定していることに対し、板倉大道は創作された人物であり、名前も外見も階級も異なると説明した。
また、限られた史料や記録に基づき当時の人々の声や人生に思いを巡らせて物語を創作することは、歴史を題材としたフィクション作品の通常のアプローチであり、「歴史捏造」や「史実の歪曲」には当たらないと主張。総力戦研究所の自由闊達な議論や、飯村穣氏名義の「講評」が研究生たちの結論をそのまま受け止めなかったことなどに着想を得て物語を創作したが、飯村穣氏をモデルとしたわけではないと述べている。
さらに、原告の主張は作中の人物像を一面的に捉えたものとし、板倉大道少将は単純化された人物ではなく、組織の論理に従わざるを得ない現実を理解し行動する人物として描かれていると説明。一方的な主張で作品公開が制限されれば、近現代史を題材とした表現行為が著しく制限されると警鐘を鳴らした。
製作委員会は既に、作中の登場人物と飯村穣氏との混同を避けるため、「所長」という肩書や呼称を映画版では使用せず、本編冒頭にフィクションであることを明示するテロップを追加するなどの措置を講じている。これらの措置は法的に問題がないとしても、原告の主張に可能な限り配慮したものだったが、原告の納得は得られず協議は成立しなかったという。
声明の最後に、製作委員会は「敗戦を予測する合理的な知がありながら、なぜ開戦を止められなかったのか。当時の日本を覆っていた『空気』の正体は何か」と問いかけ、本作をこの時期に公開する意義を強調し、多くの人に観てもらいたいと願いを述べている。



