俳優で文筆家の岸惠子さんが7日に死去した。岸さんは俳優と文筆家という2つの顔を全力でこなし、産経新聞の取材に「特殊な人生を歩んだと思う」と回想していた。
「真知子巻き」が一世を風靡
戦後間もない頃から一時代を築き、演じたヒロインの名にちなみストールを頭から首元にまく「真知子巻き」が一世を風靡した。一方で、晩年も執筆活動の意欲は衰えなかった。
海外旅行が自由化されていない時代に24歳で単身フランスに渡り、仏人の映画監督と結婚。41歳で別れ、単身となって以降の数十年、パリと日本を行き来して俳優業を続けた。
役作りへのこだわり
「自分の人生の体験の中に、役を呼び込み近づける。ですから、役作りという言葉は好きではありません」。俳優としてのこだわりは自然な身のこなしやセリフ回しにつながった。
自らの作品に重用した市川崑監督(平成20年死去)は「現場で着付けや髪をササッとくずすと、演じる人物がリアリティーを持って浮かび上がる。得難い女優」と絶賛した。
作家志望から文筆家へ
俳優になる前は作家志望。高校生のころ、川端康成に小説を見てもらおうと定宿を訪ねたが、見せることができずに持ち帰ったというエピソードもある。エッセーやルポルタージュも積極的に執筆し、リズミカルな文章で読者を楽しませた。
「人生にはたびたび偶然や非日常が訪れる。それを見逃したらもったいない。一人の人間にはいろんな可能性があるんです」
晩年まで持ち前の好奇心と行動力を貫き通した岸さん。92歳だった昨年3月、文化交流の功労者に贈られるフランスのルネサンス・フランセーズ大賞(メダイユ・ドール)を受賞した際は、コメントで「最後のエッセー集」を執筆中だと明かしていた。



