子どもの頃の楽しい経験は、人生後半でも通用するのか。そんな問いかけに、55歳の漫画家・倉田真由美氏が自身の体験をもとに答えを探る。倉田氏は、かつて夢中になったアジ釣りに再挑戦したが、期待とは裏腹に「渋すぎる現実」を味わうことになった。
船長の指示で移動、釣果は微妙
「ちょっとよくないので、場所を移動します。皆さん、竿を上げてください」。船長の指示で、全員が垂らしていた糸を巻き上げた。ふたたび船を走らせ、船が止まると船長の号令と共に餌をつけ、竿を振る。ここでは、Hさんがアジ3匹と小さなイワシ3匹、倉田氏がアジ2匹、Mがアジ2匹、ミカンがアジ1匹と小さなイワシを1匹釣り上げた。ミカンのアジは、Hさんとさらに隣の男性との糸が絡まって、誰のアジかわからず、ミカンがじゃんけんで勝ってゲットしたものだ。
「思ったほど釣れないな……」と倉田氏が独り言を漏らすと、Mが「こんなものじゃないの?」と言った。しかし倉田氏は、釣りが趣味の女友だちが「アジは釣れすぎて毎回困るくらいだから、最近はあんまり行かない」と話していたことを伝え、バカスカ釣れるイメージを持っていた。
「釣れすぎて困る」の予定が…
実際には、船が止まってしばらくの間は引きがあるものの、その後は餌が突かれてなくなるということもなく、パタリと魚の反応がなくなる。倉田氏は「クーラーボックス足りなかったらどうしよう」と心配していたほどだったため、かなりの拍子抜けだったという。本物の釣り好きは違うのかもしれないが、倉田氏の場合、釣れないとサビキをカゴに詰めたり糸を垂らしたりリールを巻いたりするのが、ただの「作業」のように感じられてしまった。結局、このあともう1回場所を移動したが、Mがアジを1匹釣っただけでまたパッタリ釣れなくなり、その日はお開きになった。
船は揺れ、船酔いの兆候も…
さらに、船の揺れが続き、倉田氏には船酔いの兆候も現れ始めた。子どもの頃には感じなかった体調の変化に、年齢を実感する。それでも倉田氏は、釣りそのものではなく、仲間と過ごす時間や自然の中での体験に価値を見いだそうとする。しかし、子どもの頃の「楽しさ」がそのまま通用するわけではないという現実を突きつけられた。
人生後半の生きがい探しに思うこと
倉田氏は、この経験を通じて、人生後半の生きがい探しには、過去の楽しい記憶をそのまま再現しようとするのではなく、新しい視点や適応が必要だと感じたようだ。子どもの頃のように夢中になれない自分に戸惑いながらも、それを受け入れ、別の楽しみ方を見つけることが重要かもしれない。
「子どもの頃の楽しさ」は、人生後半でも通用するのだろうか。倉田氏の体験は、多くの読者に自身の生きがいについて考えさせるきっかけとなるだろう。



