第85期順位戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)B級1組は、4回戦全6局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち東京・将棋会館で行われた渡辺明九段―斎藤慎太郎八段の一戦は94手で渡辺九段が勝利。強豪相手の快勝で連勝数を4に伸ばし、A級復帰に向け大きく前進しています。
明暗分かれた両者
3連勝スタートで勢いに乗る渡辺九段に対し、斎藤八段は1勝のあと2連敗とやや不調気味。両者の調子の波に比例するように、この日は渡辺九段の積極的な指し回しが功を奏する1日となりました。相掛かりに進んだのは予想された展開のひとつとはいえ、先手の斎藤八段が早々に角道を止めたのは意外な趣向。守勢を受け入れつつすべての駒を活用する狙いです。
前例のない展開のなか、後手の渡辺九段の指し手が走ります。6筋の歩を突っかけたのはこの筋に歩を垂らす含みで、相手の駒組みを真っ向から否定しにかかるもの。この主張が通って実戦は先手がぎこちない駒組みを余儀なくされることとなりました。順位戦らしい長考合戦が続きますが、斎藤八段としては玉飛接近の悪形をさばくための苦心の時間という印象です。
敵陣射抜いた自陣角
夕食休憩明けから徐々に形勢に差がつき始めます。飛車走りの攻めを保留してジッと自陣角を打ったのが渡辺九段の充実ぶりを示す一手。金銀が偏っている先手陣が単純な角成りの狙いを受けづらいのを見越しています。本譜も急所への馬作りが成立して後手有利に。飛車を手にした斎藤八段ですが、一手先逃げした渡辺玉が深く効果的な寄せを見出せません。
終局時刻は22時57分、最後は斎藤八段が形を作って投了。終局直前(93手目)、斎藤八段としては玉を左辺に逃げ出しても長手数の即詰みがあったため投了やむなしの状況でした。序盤から相手の構想をとがめる姿勢で圧巻の攻めを披露、強敵を下した渡辺九段は4連勝に星を伸ばして同星の服部慎一郎七段とともにA級昇級を現実的な目標としています。
局後SNSを更新した渡辺九段は「先に工夫を出されて予定ではなかったですが、早くに動きました」と序盤作戦について振り返った(写真は第83期A級順位戦最終局のときのもの。撮影:會場健大)。



