終戦後、歌舞伎町周辺で移転を繰り返しながら営業してきた食事処「ひょっとこ」。大物芸能人が贔屓にしたのり弁や、指詰め前のヤクザが最後の晩餐に訪れた逸話など、70年にわたり愛され続ける理由とは。
常連客が「お母さんの前では素直でいたい」と思う店
歌舞伎町にはさまざまな稼業の人がいるが、ひょっとこの常連は「お母さんの前では素直でいたい」と考えている人も多いのではないか。文江さんの笑顔を前にしながら、そう思えて仕方なかった。
再開発で移転、ランチタイム廃止も
ひょっとこは再開発に伴い、1989年に区役所通りから現在の場所に移転。その数年前におばあちゃまが死去してからは、茂さんと文江さんの2人で切り盛りしており、ランチタイムを廃止して、18時から翌2時まで営業していた。
廃業の危機を救った娘夫婦
2020年、新型コロナのパンデミックに直面。時短営業を余儀なくされ、助成金や協力金だけでは立ち行かず、文江さんは「もうやめるしかないのかな」と覚悟していたという。そんな危機を救ったのは、娘の円さんの夫・明さんだった。
店を存続させるため、フードデリバリーやクラウドファンディングを提案。文江さんも茂さんも最初は「できるわけない」と渋っていたが、明さんに教わりながらチャレンジした。すると、デリバリーの注文は予想以上に入り、大忙しに。クラウドファンディングでは120万円超が集まった。ランチタイムも再開し、明さんや円さんにも手伝ってもらいながら店を回し、何とかコロナ禍を乗り切った。
文江さんは当時を振り返り、「私ら夫婦は年だから、(デリバリー注文を管理する)タブレットみたいなものも使い方を覚えるのが大変だし、うちのお父さん(茂さん)も頑固だから、『できるわけないでしょ』って怒っちゃったんです。でも明くんは、『大丈夫、やろう』って励ましてくれて、教わりながら何とかやってこれました。娘夫婦と一緒に、頑張ってきたんです」と語った。



