川崎市の生活介護事業所「studio FLAT」に通う障害のあるアーティストたちが、廃棄される化粧品を絵の具として使い、アート作品に生まれ変わらせている。化粧品大手「日本ロレアル」(東京都新宿区)がファンデーションなどを提供しており、完成した作品は、31日から東京・六本木ヒルズなどで始まる「六本木アートナイト」で展示される。
化粧品を絵の具に
9月上旬、川崎市中原区の「studio FLAT kosugi」では、知的障害などの障害のあるアーティストたちが作品づくりに取り組んでいた。KOTONEさん(20)は、画用紙に手で丁寧にファンデーションを塗っていた。「ぬるぬるしていて、スライムを引き伸ばしているみたいな感覚」と真剣な表情だ。その隣では、ファンデーションが塗られた画用紙に、MARUさん(64)が、アイライナーを使って自宅で飼っていた猫を描写。「伸びが良くて思う通りに描ける」と喜んでいた。
提供のきっかけ
化粧品提供のきっかけは、日本ロレアルの谷亜由美さん(49)が、同事業所の個展を鑑賞したことだった。色鮮やかで個性的な絵に魅了され、2023年には社屋のカフェテリアなどで描いた絵を飾るサブスクリプション契約を締結した。
「廃棄予定の化粧品がたくさんあるんです」。打ち合わせの際に谷さんが、同事業所の大平暁代表(55)にそう打ち明けた。日本ロレアルは「ランコム」や「シュウ ウエムラ」などの人気の化粧品を取り扱うが、販売店舗で使用するテスターや試供品は、新製品に移り変わるタイミングで廃棄されるという。それを聞いた大平さんが「絵の具として使えるかもしれないですよ」と返答すると、トントン拍子で提供が決まった。
作品の展示
同事業所ではこれまでに、口紅やアイシャドー、マスカラなどの提供を受け、多くの作品を手がけてきた。アイシャドーのラメを絵の具と混ぜたり、アイライナーを筆ペンのように使ったり。大平さんは「絵の具だけでは出すことの出来ない色味があり、表現に幅が出た。絵の具の節約にもなる」と語る。
普段は香水などで知られる「メゾン マルジェラ」で市場戦略を担当する中村有里さん(30)は、障害者との交流を通じて、「製品の基本理念や広告で、『誰かを排除しない』ということを心がけるようになれた」という。今回の展示では「個性あふれる作品を楽しんでほしい。目をこらして見てもらい、化粧品が使われていることに気づいていただけたらうれしい」と話した。
アーティストらが制作した作品約20点は、六本木ヒルズなどで開催される「六本木アートナイト 2026」で展示される。イベントは31日~11月1日で、作品の展示のみ8日まで延長される。