第78回正倉院展が24日、奈良市の奈良国立博物館で開幕し、国際性豊かな天平時代を物語る60件の至宝が出展される。古代の匠が技巧を駆使して作った宝物も多く、中には後世に継承されず、すたれてしまった技術もある。天平の美を形成した「幻の技法」を紹介する。
夾纈で作られた聖武天皇遺愛の屏風
花が咲く樹木と尾長鳥をあしらった聖武天皇遺愛の「鳥木石夾纈屏風」は、「夾纈」という染色技法で制作された。同じ文様を彫った2枚1組の版木に布を挟んできつく締め付け、版木の外側の穴から文様部分に染液を注いで染める。折りたたんだ布を挟むと、左右対称のデザインになるのが特徴で、中世に途絶えた技術だ。
鳥木石夾纈屏風は6扇分が伝わり、今回は2扇が出展される。鳥はそれぞれ逆方向を向いているが、大きさはほぼ同じ。宝物の献納目録「国家珍宝帳」から、夾纈の屏風は390扇あったと推定されている。いずれも高さと幅は同じ規格で、大量生産に適していたらしい。
平脱と巻胎の漆工芸
「銀平脱合子」と「漆胡瓶」は、文様部分に漆工芸の技法「平脱」が施される。文様の形に切った金属の薄板を器に貼り、上から漆を塗り込めた後に金属の上の漆を剥ぐことで、漆地に文様が浮かび上がる。
いずれも器部分はテープ状に加工した細い薄板を巻き上げるなどして成形する東アジア独自の「巻胎」技法で作られている。木をくりぬいて作ると、乾燥によって変形したり、割れたりする恐れがあり、容器の制作に適した技術だった。
撥鏤で表された碁子の文様
「紅牙撥鏤碁子」と「紺牙撥鏤碁子」に見られる、花枝をくわえて飛ぶ鳥の文様は、中国・唐時代に流行した「撥鏤」の技法で表される。紅や紺色に染めた象牙に線彫りをして、象牙本来の地色で文様をあしらう。華やかだが、その難しさからか、平安時代以降すたれてしまった。
奈良国立博物館の三本周作主任研究員は「高度なだけではなく、工芸品の素材や構造、制作の目的などに応じて合理的な技法が選択されているとも言える」と語る。宝物は当時の高度な職人技を今に伝えている。
開催概要
第78回正倉院展は、奈良国立博物館(奈良市登大路町)で10月24日(土)から11月9日(月)まで開催。会期中無休で、事前予約の日時指定入場制を採用している。
開館時間は午前8時から午後6時まで(金・土・日曜と祝日は午後8時まで)。入館は閉館の60分前まで。日時指定券は一般2000円、高大生1500円、小中生500円。レイト割として、一般1500円、高大生1000円、小中生無料(月~木曜は午後4時以降、金・土・日曜と祝日は午後5時以降の日時指定券に適用)。
チケットはローソンチケット(Lコード:57878)や美術展ナビチケットアプリなどで、当日各時間枠の入場開始時刻まで販売中(先着順)。問い合わせはハローダイヤル(050・5542・8600)。主催は奈良国立博物館で、特別協力は読売新聞社。協賛に岩谷産業、印傳屋上原勇七、NTT西日本、関西電気保安協会、近畿日本鉄道、JR東海、JR西日本、ダイキン工業、ダイセル、大和ハウス工業、中西金属工業、丸一鋼管、大和農園、ロート製薬。協力は読売テレビほか。