1995年のフランス映画『憎しみ』(原題:La Haine)の4Kレストア版が、2026年10月9日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかで公開される。配給はディスクユニオンとalfazbet。この発表に合わせて予告編とポスタービジュアルが公開された。
30年前の衝撃作が4Kで蘇る
本作は、実際に起きた事件に着想を得て製作された。当時27歳だったマチュー・カソヴィッツ監督が、移民系住民への差別や貧困、警察による暴力といったフランス社会の矛盾を背景に、鮮烈なモノクロ映像と緊迫感あふれる演出で、行き場のない怒りを抱えた若者たちの24時間を描いた。第48回カンヌ国際映画祭では監督賞を受賞。作品を「反警察的」と受け止めた映画祭の警備担当警察官たちが、レッドカーペットを歩く監督・キャストに背を向けて抗議する異例の出来事も話題となった。
主演は当時28歳のヴァンサン・カッセル。坊主頭にストリートファッション、鏡に向かって『タクシードライバー』(1976年)のトラヴィスを真似るヴィンツ役で強烈な存在感を放ち、その後フランスを代表する俳優のひとりとなった。サイード役にはサイード・タグマウイ、ユベール役にはユベール・クンデ。街を歩き、くだらない冗談を交わし、時に苛立ちをぶつけ合う3人の姿を、ヒップホップをはじめとする当時のユースカルチャーとともに圧倒的な熱量でスクリーンに刻みつけた。
30年経った今も続く影響
その影響は30年後の今も続いている。2026年7月に公開されたCharli xcxの新曲「Camera」のミュージックビデオには、ヴァンサン・カッセル本人が出演。モノクロで撮影された映像の中で、『憎しみ』のヴィンツを象徴する「指を銃に見立ててこめかみに向ける」ポーズを再現し、本作を彷彿とさせる姿を披露している。
一方、社会から疎外された若者たちを見つめる視線もまた、現在までその切実さを失っていない。「怒りと熱狂がほとばしる」(The Guardian)、「観る者に真正面からの対峙を迫る映画だ」(BFI)、「燃えるような現在形の映画」(Positif)と評される本作は、分断が深まる現代の世界と強く響き合う。
カソヴィッツは「私がこの映画を撮った理由は、若者たちが死んでいるからだ。そして、誰も彼らのことを知らなかったからだ。観客に彼らを知ってもらいたかった。ニュースの中の『若者』に、名前と顔を与えるために。人々には、現実を突きつける一撃が必要なんだ。まだ何も終わっていないと思い出させるために」と語っている。
公開された予告編の内容
この度公開された予告編は、銃声と、「50階から落ちた男の話」という意味深なナレーションから始まる。「男は落下しながら自分に言い続ける。まだ大丈夫、まだ大丈夫、まだ大丈夫──」。暴動の爪痕が残るバンリューをさまようヴィンツ、サイード、ユベール。DJが団地に響かせる音楽、街を疾走する3人、警察との衝突。そして、警官が紛失した拳銃を手にしたヴィンツが、こちらへ銃口を向ける──。鮮烈なモノクロ映像と張り詰めた緊張感の中、3人の24時間が次第に加速していく。「これは、落下する世界のはなし」──高層ビルから落下する男の寓話とともに、30年を経てもなお観る者に真正面から迫る本作の衝撃を凝縮した映像となっている。
ストーリーとキャスト・スタッフ
パリ郊外〈バンリュー〉。移民や低所得労働者が多く暮らす団地で暴動が発生した。ユダヤ系のヴィンツ(ヴァンサン・カッセル)、アラブ系のサイード(サイード・タグマウイ)、アフリカ系のユベール(ユベール・クンデ)──異なるルーツを持つ3人の若者は、警察による少年への暴行事件をきっかけに緊張が高まる街で、警官が紛失した一丁の拳銃を手にする。
出演者は、ヴィンツ役にヴァンサン・カッセル、ユベール役にユベール・クンデ、サイード役にサイード・タグマウイ、アステリクス役にフランソワ・ルヴァンタール。スタッフは、監督・脚本・編集をマチュー・カソヴィッツ、撮影をジョルジュ・ディアーヌ、照明をピエール・エイム、音響をヴァンサン・ツリ、録音をドミニク・ダルマッソ、美術をジョゼッペ・ポンツーロが務めた。公開から30年、時代を超えて世界の現在を鋭く映し出す、フランス青春映画の金字塔が4Kでスクリーンに甦る。



