「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」(原作・脚本=ナガノ、監督=及川啓)が大ヒット中だ。配給の東宝によれば、公開から20日(8月12日まで)で興行収入80億7000万円、観客動員数563万人を突破した。
本作は、ちいかわや親友のハチワレらが、特別な島で繰り広げる夏の大冒険を描く。原作屈指の長編エピソード「セイレーン編」の映画化で、読売新聞編集委員の恩田泰子氏は、「何で平和でいられないのか。自然に見据えさせる映画でもある」と評する。
ちいかわたちの日常と、島への招待
ちいかわたちは、ほのぼのとした日常を送る一方で、「草むしり」や「討伐」などの仕事で報酬を得て暮らす労働者でもある。ある日、友だちのうさぎが持ってきたチラシには、「カンタンな討伐で100倍の報酬」や「限定島ラーメン」など、魅惑的な言葉が並んでいた。
最初は怪しんでいたラッコも、大の甘党ゆえについ釣られ、一同は「島合宿」気分で船に乗り込む。到着早々、島民たちから大歓迎を受けるが、その晩、伝説の生物セイレーンと人魚たちに偶然出会い、島民を次々と連れ去っていることを聞かされる。翌朝、島民たちはセイレーンの討伐を依頼するためチラシをまいたと明かす。
共感を呼ぶ主人公と、映像の魅力
映画を初めて見たという恩田氏は、ちいかわの価値観や生活レベルが「きちんと普通に現代的」と指摘。おいしいものや楽しいことが好きで、友だちと過ごす時間を大切にする姿に、すんなり共感できると語る。
映像面では、島の風景や水中シーン、光と影を駆使した美術が原作の世界を立体的に見せている。セイレーンの歌声と拮抗するラップのシーンも、音楽と大胆な映像が相まって出色だという。
平和だった島を変えたものとは
物語は冒険とアクション、ミステリーをはらんで展開する。なぜ対立の構図が生まれ、討伐が必要になったのか。何が平和だった島を変えたのか。すべてが明らかになった後も、実はすっきりとはしない。
恩田氏は「簡単に誰かを断罪するのではなく、自分だったら何をどうしたか考えさせる」とし、日本の戦争の記憶とは無関係ながら、現在も続く紛争や戦争のありようとどこかつながっている気がすると述べている。



