ドラマ『惡の華』第10話が描く不在の存在感、鈴木福の演技力が光る
ドラマ『惡の華』第10話、鈴木福の演技が光る

少年・少女の「不安」「葛藤」「痛み」を描くテレビ東京のドラマ『惡の華』(毎週木曜24:00〜)の第10話が11日に放送された。本稿では、このエピソードの重要性と、俳優・鈴木福が演技力で体現した点について考察する。

第10話あらすじ:春日と常磐の絆が深まるが…

春日(鈴木福)は、常磐(中西アルノ)が書く小説の主人公に自身の過去を重ね、続きを強く望む。常磐はその熱意に応え、小説を書き進める決意をする。心を通わせ始めた二人。帰り道、春日は佐伯(井頭愛海)と偶然再会し、連絡先を交換する。

後日、改めて会った佐伯は「仲村さん(あの)は?」と尋ねる。春日が「あれから一度も会っていない」と答えると、佐伯の様子が一変する。祭りの櫓の上で心中しようとした春日と仲村。しかし仲村は春日を突き落とした。その意味を問う佐伯は「常磐さんのことが好きなの?」と問い詰め、春日が「彼女の小説が読みたいだけ」と言うと「嘘つき。あの子も不幸にするの? 仲村さんの代わり。自分を慰める道具でしょ」と激しく非難する。春日は否定するが、佐伯は「都合よく使っていらなくなったら捨てる。だって、あの子は仲村さんじゃないから」と告げる。

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クリスマスイブ、春日は常磐と彼氏が仲直りした後ろ姿を目撃し、自宅で物思いにふける。そこに自分の影が話しかける。「お前が仲村さんと向き合おうとしなかったから、全部壊した」。幻想から抜け出そうとする春日は、妄想の中の常磐に「君はずっと一人で悩んで。ずっと自分を押し殺して…。僕にはできない。一生、幽霊の世界で生きていくんなんて!」と叫ぶ。そして決意し、常磐のバイト先に乗り込み「好きだ。僕と付き合ってくれ!」と告白。常磐はバイトを辞め、春日と共に夜の街へ飛び出す。二人は走り、立ち止まり、ハグする。春日の心は幸福感で満たされる。

転機が訪れる。春日の祖父が倒れたのだ。故郷に戻る準備をする両親に「お前は来なくていい」と言われるが、春日は「僕も行く」と宣言する。

元有名子役の多くが抱える悩み

第10話は、一見すると春日と常磐の関係が大きく前進する回だが、物語の中心にいるのは常磐ではない。むしろ、画面にほとんど姿を見せない仲村佐和だ。佐伯との再会、自身の影との対話、常磐への告白。春日の行動はすべて現在に向かっているようで、根底には常に仲村の不在が横たわる。本作の興味深い点は、仲村が物理的に退場した後も、春日の中で生き続けることだ。

ドラマ版では原作以上にその構造が際立つ。原作では常磐の中に仲村の残像を感じさせる描写があるが、ドラマ版では仲村を演じるあのと常磐を演じる中西アルノの個性が大きく異なる。あのが体現するのは破滅と混沌、中西は光と透明感。そのためドラマ版では、常磐の中に仲村を見るのではなく、春日の内面に残る仲村の痕跡を描く方向へ舵を切っている。

そして、その橋渡しを担うのが鈴木福の演技だ。この回に仲村はほとんど登場しないが、佐伯に追及される場面、自身の影と向き合う場面、常磐に想いを告げる場面でも、春日の心のどこかには常に仲村の存在が残り続けているように感じられる。画面には映っていないが、確かにそこにいる。鈴木福は、その不在の存在感を極めて繊細に表現している。それは単なる感情表現ではなく、春日の中に残り続ける記憶や執着、消化しきれない傷そのものを演じる作業だ。

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かつて元有名子役で女優として復帰した人物へのインタビューで、彼女はこう語っていた。「子役の時は子役らしい芝居を求められ、それが身についてしまう。周囲のイメージも合わさり、そこから抜け出すのは難しい。私はたまたま一度芸能界を離れ、社会を経験したことでイメージを刷新できたが、多くの元有名子役はこうした悩みを抱えて生きていくのではないか」。この言葉は鈴木福にも当てはまるだろう。国民的子役として知られた彼にとって、成功体験は勲章であると同時に、常に比較され続ける宿命でもある。

だが『惡の華』で彼が演じるのは、かつて多くの人が知っていた“鈴木福”ではない。欲望と自己嫌悪を抱え、過去の亡霊に取り憑かれながら、それでも前へ進もうともがく春日高男だ。第10話を見て感じたのは、そこに元子役としての鈴木福ではなく、一人の俳優として複雑な人物を成立させている鈴木福の姿だった。