モンゴル抑留の真実に迫る「魂の書」 国家の不作為を問う
モンゴル抑留の真実に迫る「魂の書」 国家の不作為

第2次世界大戦後、1万4000人の日本人がモンゴルに連行され、約1700人が命を落とした。今なお約200人の身元が特定されていない。この書は知られざるモンゴル抑留の真実に、全身で迫った「魂の書」である。

モンゴル抑留の背景

モンゴル抑留は、満州侵攻を助けた見返りに、ソ連が自軍の確保した日本人捕虜をモンゴルに提供したことで生まれた。ソ連軍は目標数を確保するため、軍人だけでなく無差別に「日本人狩り」を行い、民間人の割合は1割を超えた。劣悪な環境のため、抑留者の死亡率はシベリア抑留を凌いだ。

日本政府の不作為

日本政府は誠実に対応したのか。シベリア抑留のような抑留者に関する外交文書は全くない。身元特定のための職員派遣も2018年になってからだ。抑留者は母国に見捨てられてきたのだ。

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その国に代わって著者はモンゴル諜報機関の門をこじ開け、公文書館に足を運び、1600人以上の抑留者の死亡記録を持ち帰った。全国を回って遺族を捜し出し記録を届ける「死亡記録配達人」となって、11道府県の抑留者20人の遺族に届けた。

著者の使命感

取材し、報道すればそこで一応終わる。それが記者の常だが、何がそこまで著者を駆り立てたのか。何よりも国の「不作為の罪」への怒りだった。知った者の務めとしてあなたたちのことは忘れません、という自責を込めた覚悟にほかならなかった。その意味でも「鎮魂の書」なのである。

著者は抑留者の名前を一人一人、ふりがな付きで明らかにしている。「歴史は、個々の人間の人生の積み重ねである」という歴史観のもとで、大河のような歴史の中に一人一人の人生を織り込みたいと思ったからだ。

同じジャーナリストとして、同じ一人の人間として、その崇高なまでの使命感に、読み終わってしばし頭を垂れざるを得なかった。

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