『ルドルフとイッパイアッテナ』シリーズが40周年を迎え、2026年7月に第6作『おれのなまえはイッパイアッテナ』が刊行された。作者の斉藤洋さん(74)が、本作について語った。
デビュー作から40年、第6作は前日譚
デビュー作『ルドルフとイッパイアッテナ』は、岐阜から東京に迷い込んだ飼い猫ルドルフと、都会の野良猫イッパイアッテナの出会いを描いた作品だ。第6作は、イッパイアッテナがルドルフに出会うまでの生い立ちを振り返る、第1作の前日譚となる。
斉藤さんは、シリーズを重ねるうちに登場する猫たちが脳内でひとりでに動き出すようになったと語る。そのうち「少年期に苦労していないのに、イッパイアッテナのような深みのある猫になるだろうか」と疑問を抱き、筆を執ったという。
生い立ちとデビューのきっかけ
本作では、生後すぐに捨てられたイッパイアッテナが、「食べ物の入手方法」「けんかの戦い方」「教養の大切さ」など自然や社会のルールを実体験から学び、成長してきた姿が明かされる。
斉藤さんは1986年、このシリーズの第1作にあたる作品で「講談社児童文学新人賞」を受賞しデビューした。新聞で見つけた募集記事は今でも手帳に貼っているといい、応募理由を「貧乏だったから賞金がほしかった」と振り返る。
創作の裏側と習慣
受賞までの経緯は物語に出てくる猫たちのように現実的だ。まず適当な児童書を手に入れ、適切な字数を分析。ドイツの教養小説などから「猫と教養」という着想を得た後、日本人が親しみやすい「水戸黄門」や「赤穂浪士」などのエッセンスを盛り込み、作品の大枠を定めた。
大きなテーマが決まった後は、猫の目線に立つために町中でしゃがんだり、どれくらいジャンプができるか観察したりした。「ウソを書くんだから。細部ほど本当じゃなきゃいけない」と心がけて筆を進めたという。
寝る前に自著を読み返すのはデビュー以来の習慣だ。受賞から7~8年ほどたった頃、ふいに「少年と父親の関係性を書いていたのかも」と感じた。「書くにつれ、自分のことが分かり成長していく。自分の問題を解決し終わっていないから、いまだに児童文学をやっているんでしょう」と語る。
『おれのなまえはイッパイアッテナ』は講談社から1650円で刊行されている。



