10代を対象に、分かりやすく編集したノンフィクションシリーズの刊行が相次いでいる。学習指導要領で重視する探究的な学習にもつながり、学習現場などで需要が高い。2021年に刊行を始めた「ちくまQブックス」は7月から第4期に入り、同年から続く「岩波ジュニアスタートブックス」も好評だ。
ちくまQブックス、読みやすく工夫
7月に刊行された筑摩書房の「ちくまQブックス」の2冊は、いずれも読者の好奇心をかきたてる。昆虫研究者で山口大准教授の小島渉さんが自然観察の魅力とノウハウを実例を交えて伝える『生きものを探究する』や、名取佐和子さんの『7日でできるキャラクター創作入門』などが並ぶ。
シリーズは、「クエスチョン(なぜ?)からクエスト(探究)へ」がテーマだ。身近な問いを手がかりに、探究へとつなげる大切さを伝える。副題では「探究学習ってどうやるの?」「考えるってどういうこと?」といった疑問を掲げる。巻末には読書案内をつけ、探究的な学習での副読本にも役立つようにしている。
同社の刊行物としては「ちくま新書」が有名で、より若い読者を対象にした「ちくまプリマー新書」も内容に定評があり、中学入試で使われることが多い。一方で、国語の教科書を刊行している同社には、中学や高校の現場から「難しくて生徒が読み通せない」との声も寄せられていたという。それらが、10代を対象にした「ちくまQブックス」誕生のきっかけになった。
本文100ページ、ルビやイラストで工夫
シリーズは読書経験が少なくても読みやすいように、本文を100ページほどにまとめている。鮮やかな色遣いに親しみやすいイラスト、教育漢字以外にはルビを振るといった工夫を施す。金子千里編集長は「分からないことはネットで調べることも多いと思うが、1冊の本を読み通すことで、読解力や、読みながら物事を考える力を身につけられる」と話す。
第3期までに30点を刊行した。著名な心理学者の今井むつみさんが執筆した『AIにはない「思考力」の身につけ方』、片岡則夫さんの『マイテーマの探し方』など1万部を超える作品も生まれている。
約1年半ぶりとなる第4期は全6点が予定され、ホラー小説で知られる乙一さんや経済学者の山口慎太郎さん、料理研究家の有元葉子さんらが執筆する。金子編集長は「答えのないことを探究することの大切さを知ることのできるシリーズ。100冊を目指して刊行を続けたい」と語る。
岩波ジュニアスタートブックス、中学生向け
岩波書店の「岩波ジュニアスタートブックス」は、中学生が対象だ。生徒の進路選択にも役立つような幅広いテーマをそろえ、こちらも学校図書館を中心に広く支持を集めている。
新書よりも少し大きなB6判の大きさで、2色刷りだ。本文の分量は3万字ほどで、1979年創刊の岩波ジュニア新書の約半分に抑えている。図やイラストも多く盛り込んで読みやすい作りになっている。
シリーズは、7月時点で39冊を数える。テーマ選びには、編集者が中学校を訪れて聞いた生徒の声を反映することもあるという。
創刊時に出た1冊で、国連事務次長の中満泉さんが核兵器や格差などの問題について記した『未来をつくるあなたへ』が6刷となった。6月の新刊『AIはどのように賢くなってきたのか』は、日本女子大の倉光君郎教授が執筆した。急速に普及するAIの仕組みを丁寧に解説している。
須藤建編集長は「読書好きの中学生もノンフィクションは、あまり手に取らないことが多い。小説以外の世界を知るきっかけにしてほしい」と話している。



