ポッドキャストを配信する女子大生4人を主人公に据えた異色作『We are connected』(リイド社)を、漫画家の菜緒都さん(40)が刊行した。初の単行本は、あえてマンガ的な表現を避け、映像的な演出を盛り込んだ。たわいもない会話に潜む緊張感も鋭く描き出している。
「つながり」に重層的な意味合い
「つながりという言葉に重層的な意味合いを持たせることができた」と意欲作を世に送り出した漫画家は、終始控えめだった。「本を出せた実感はもちろんあります。でも、とんとん拍子すぎて、ずるしている気がするんですよ」。ウェブのコミックサイトに載せた読み切り作品が、編集長の目に留まった。切り口を変えた新作を提案され、長編へと結実していった。
主人公の女子大生4人は、アパートの一室で、こたつを囲みながらポッドキャストを収録している。雑談主体の番組には、執拗に中傷メールが送られていた。たわいもない会話を録音する4人のやりとりにはどこか緊張感が漂い、徐々にこの場にはいない別の友人の存在が浮かび上がってくる。
マンガ的な表現を避けた演出
制作するうえで、自らに課した演出上の制約は多い。アパートの外観すら映さず、舞台は室内に固定した。キャラクターが内面を語るモノローグは一切ない。黒塗りの背景で不安な心理を示すような、マンガ的な表現もあえて省いている。「まだマンガを全然描いていないので、選択肢を広げちゃうと描けなかったんですよね」と語る。
その慎重さが、主流のマンガとはひと味違った読み味を生んだ。モノローグがないからこそ、4人の感情は容易に分からず、細かいコマ割りで描かれた視線やしぐさの数々から目が離せない。小さなコマであっても、背景がきちんと描き込まれ、カメラに映し出された映像を見ているような感覚に陥る。
映像的なマンガへの模索
「もっとストイックでかっこいいマンガがあってもいいだろうと思っているんです」と穏やかな物腰に、確かな熱意をにじませる。高校卒業後、ミュージシャンを志して新潟から上京し、「ヴィレッジヴァンガード」で、『ピンポン』などで知られる松本大洋の作品に出会った。映像のように描かれる独自のスタイル、「絵のかっこよさを追求する」作風に目を開かされた。
音楽制作を続ける傍ら、外国人にオンラインで日本語を教える仕事をしていた。教材にマンガを活用しているうちに、自分でも作ってみたくなった。「いつか描こうとしていたのかもしれないです」。憧れていた「映像的なマンガ」を模索する日々が始まった。30代後半からの挑戦だった。
「つながり」がもたらす開放感
タイトルにもある「つながり」は、物語の終盤に大きな広がりをもたらす。小さなポッドキャストは、狭い室内を越え、見知らぬリスナーや社会ともつながっていく。物語のほとんどが部屋の中で完結するだけに、その開放感が深い印象を残す。
自身もまた“室内”から出ようとしている。「オリジナリティーは出せたかなと思うけど、表現の可能性を狭めちゃった気もする。単純な制約は次から取っ払っていきたいですね」。歩み始めたマンガの世界はどこまでも広い。



