広島や長崎の原爆を受けた被爆者の子ども「被爆2世」は、触れるのが難しいテーマだという。健康の不安を訴える人がいる一方で、影響はないので静かにしてほしいと語る人もいるからだ。
「最初は私も会えば会うほど、どちらの意見を言う人の顔もリアルに浮かぶようになり、分からなくなりました」
全国紙の記者時代に関心を深めたジャーナリストが、多くの2世に会って実情に迫った。ABC C(原爆傷害調査委員会)の調査、差別や偏見の解消を求めた運動の歴史、親の体験を語る平和運動の担い手としての期待と葛藤などを丁寧にたどる。
被爆者が子どもを持つことの葛藤
被爆者は、子どもを持つか悩んだ人が少なくなかった。その中で、被爆2世は<被爆者が生きて命をつないだ証である>と記す。
「大きな不安がある中で、本当にすばらしいことだと思う。一方で、死産や流産も実際にあったし、子どもを持たない決断をした被爆者の苦しみを絶対に忘れたくない」
命を絶とうとした2世の少女のことも記述した。原爆がもたらす心の傷は、次の世代も苦しめていることを実感させる。
核問題の本質とジャーナリストの思い
「被爆者だけでなく、2世や3世の体験に耳を傾ける必要がある。81年が過ぎても終わりが来ないところに、核の問題の本質がある気がします」と語る。
1994年、大阪市生まれ。AKB世代で、高校時代はアイドルになりたかったという。大学のゼミでジャーナリズムを学んだことから記者となり、初任地の広島で原爆の問題を取材した。2023年からフリーに転じ、広島に住む。ショッピングセンターのインフォメーションスタッフなどのアルバイトもする。
「どれだけ聞いても分からない、でも分かろうとしたい。彼らの8月6日、9日に迫りたい」(集英社新書、1111円)



