【書評】交通革命と日本、サッカーと地政学、総力戦研究所の真実
交通革命と日本、サッカーと地政学、総力戦研究所の真実

東洋経済書評班が、今週読むべき3冊を一挙に紹介する。幕末から明治初期の航路開発が日本をグローバル経済へと導いた『交通革命と日本 グローバル世界の成立と開国・開港』(小風秀雅著)、サッカーW杯を地政学の視点から読み解く『サッカーと地政学 ゴールの先に世界が見える』、そしてNHKのドラマ『総力戦研究所』が史実を歪曲していると批判する『総力戦研究所の真実 歴史の法廷に立つNHK』の3点だ。

『交通革命と日本』:石炭需要が開国を促した

本書は、幕末から明治初期における航路開発による交通革命が日本に与えた影響を論じている。新撰組や薩長の志士はほとんど登場せず、開国によってグローバル経済に巻き込まれ躍動するヒト・モノ・カネに焦点を当てる。評者の酒井一臣・東京女子大学教授は、「他律的だっただけではない日本の経済活動が描かれている」と評価する。

重要なのは石炭だ。日本に開国を求めたアメリカが欲したのは、日本産の良質な石炭だった。当時アジアの海を支配していたイギリスは各地に貯炭所を設けたが、遠隔地からの石炭輸送にはコストがかかった。太平洋を横断する航路を開発しようとしていたアメリカは、日本の貯炭所を切望した。日本の開国により、地球の東回りと西回りの航路が接続され、アジア海域を通る汽船には日本炭が必須となった。

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ホルムズ海峡封鎖によるタンカー不通が現代社会に衝撃を与えたように、旧来の航路の存在が社会を支えていることを痛感させる一冊だ。

『サッカーと地政学』:W杯観戦に新たな視点

『サッカーと地政学 ゴールの先に世界が見える』は、サッカーをスポーツの枠組みだけでなく、地政学的な視点から分析する。W杯の試合を観戦する際に、国家間の歴史や領土問題、資源争いなどがどのようにサッカーに影響を与えているかを理解することで、より深い洞察が得られる。

例えば、旧ユーゴスラビア諸国の対立や、中東諸国の政治的な駆け引きがピッチ上に反映される様子を解説。サッカーファンだけでなく、国際政治に関心のある読者にも興味深い内容となっている。

『総力戦研究所の真実』:NHKドラマへの批判

『総力戦研究所の真実 歴史の法廷に立つNHK』は、NHKが放送したドラマ『総力戦研究所』が史実を歪曲していると断じる。著者は、ドラマが故人の尊厳を傷つけ、歴史の真実をゆがめたと批判。NHKに対して厳しい姿勢で臨む。

本書は、メディアの歴史描き方に対する問題提起としても読める。ドラマの制作過程や、研究者たちの反応などが詳細に記されており、歴史とメディアの関係を考える上で示唆に富む。

以上、3冊とも会員限定記事で全文読める。東洋経済オンラインの土曜日更新企画「今週の3本」として、書評班が自信を持って推薦する。

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