不思議で奥深い「穴」の世界を探る アナグマから地球深部まで
不思議で奥深い「穴」の世界 アナグマから地球深部まで

世の中にはさまざまな「穴」が存在します。今回は、不思議で奥深い穴の世界をのぞいてみましょう。

アナグマと少年の愛と絆

『アナグマと暮らした少年』(岩波書店)は、カナダの人里離れた村で、マクドナルド一家の末っ子で6歳のベンが謎の失踪を遂げ、約2か月後にアナグマの巣の中で発見されるという実話をもとにした物語です。動物の鳴き声や行動をまねるのが好きで、どんな動物とでも心を通わせることができるベンは、ある日遠出をして迷子になり、1匹のメスのアナグマと出会います。彼はアナグマとともに生活を始め、同じ巣の中で暮らし、次第に絆を深めていきます。

このアナグマがベンのために狩りをして獲物を与えたり、身を犠牲にして小柄なベンを敵から守ったりする場面が印象に残ります。さらに、人間社会に戻ったベンの家を探し出すといった行動からは、ベンをわが子のようにかわいがる母親のような愛情が感じられます。人間同士を超える、人間と動物の絆や愛の深さに強く心を打たれました。アナグマに触発されたかのように、ベンの帰還後、ベンの父親は息子と正面から向き合うようになります。情景や緊迫したシーンの描写が鮮やかなので、まるで映画を見ているような気分になりました。

本当の姿 モグラの驚きの能力

『もぐらはすごい』(アリス館)は、モグラの普段の生活や成長の過程を、細かくて分かりやすい絵とやさしい文章で教えてくれる絵本です。モグラ博士の川田伸一郎先生が監修しています。モグラはとても力持ちで大食いで、自分の何倍もの重さの土を運ぶことができ、1日に体重の半分ほどの量の虫を食べます。また、モグラの鼻には「アイマー器官」がついており、かすかに触れただけでそれが何かを知ることができたり、わずかな地面の揺れや空気の揺れも感じたりすることができます。

この本を読んでモグラに会ってみたくなり、調べてみたら関東では多摩動物公園しか飼育しているところが見つからず、珍しいということも初めて知りました。モグラは地味な生き物と思われがちですが、実はすごいのです。

穴にワクワク 謎を掘り下げる

絵本『「あな」の本』(フレーベル館)は、「あなの世界は、広くて深い。みんなでのぞいてみよう!」と誘っています。へこんでいる穴(ワッフルのくぼみ)もあれば、突き抜けている穴(縫い針の糸通し)もある。飛行機の窓にあけられた極小の穴、鉱物採掘のための巨大な穴、クジラの頭のてっぺんにある呼吸のための噴気孔、音色をよくする楽器の穴、「穴があったら入りたい」は2000年以上前に書かれた中国の言葉……。愉快な絵とともに穴だらけの世界を満喫できます。

『深く、深く掘りすすめ!<ちきゅう>』(くもん出版)では、地球内部の研究の進み方を説明した後、1990年に日本で発案された地球深部探査船<ちきゅう>の開発・建造計画が実現するまでをたどります。<ちきゅう>の目標は、船上からおろしたドリルパイプを回転させ、海底下を地球内部のマントルまで掘り進み、岩石や地層を掘りぬいた「コア」を採取することです。しかし、マントルまでは約1万メートルあり、その長さのパイプがたわまないようにするには船が同じ位置に留まる技術が必要です。難問に挑む過程や研究成果が紹介され、挿絵や写真が豊富で分かりやすく、掘るワクワク感が伝わります。

一方、毎日いやいや穴を掘らされた少年がいます。『穴』(講談社)の主人公はスタンリー・イェルナッツ4世。彼は、有名な野球選手のスニーカーを盗んだという無実の罪を着せられ、非行少年の更生施設グリーン・レイク・キャンプに入れられます。100年以上雨が降っていないためカチンコチンに干上がった湖底で、他の少年たちとシャベルを振るい、おのおの1日1個、直径1.5メートル、深さ1.5メートルの穴を掘るのです。「根性を養うため」と所長は言いますが、どうやら怪しいわけがありそう……。ついにスタンリーは決死の脱出を決行。5代にわたる一家の不運を吹き飛ばす痛快な結末が待っています。