アップルはなぜAIを「作り直した」のか。その背景には、2年前の誤算と、Googleとの提携による新たな戦略がある。WWDCの基調講演でティム・クックCEOが登壇した。9月1日にCEOを退任するため、同職としては最後の登壇となった。
AIの賢さを見誤ったアップル
アップルは2年前、AIに必要とされる賢さの見積もりを誤った。しかし、どのAI関連企業も「AIの需要と必要な賢さ」を正確に見積もれていない。AIデータセンターへの猛烈な投資は、必要とされるAIの賢さが拡大し続けているためであり、AI利用コストが上がり続けるのも投資回収のためだ。
問題は、「高いコストを一般消費者が支払えるのか」、そして「高いコストに見合う結果を得られるのか」という点にある。
「多くの機能が無料」という強み
Apple Intelligenceは、多くの処理をアップル製品内で行う。連携するクラウド「Private Cloud Compute」を使う場合も、多くのケースで消費者に対価を求めない。製品と一体の価値と見なされているためだ。つまり、AIサービスに利用料を支払っていない人でも、エージェンティックAIの価値を活用できる。
同様のことはGoogleのGeminiにも言える。コストが異なる以上、ハイエンドAIと全く同じにはならないが、多くの人にとって重要な観点だ。
ただし、Apple Intelligenceも完全無料ではなくなった。より賢い処理や高品質な画像生成を実現するため、アップル・Google・NVIDIAの3社が共同開発したサーバーを併用するからだ。特に画像生成では、1日に生成できる画像の量に制限がかかる可能性が高い。有料の「iCloud+」に加入すると制限が緩和されるが、具体的な制限値や緩和幅は未公開である。
アップルといえど、AIのコスト問題を無視できない。効率的な運営のためにGoogleと組んだ側面もある。
とはいえ、すべてが有料というわけではなく、ほとんどの面で「プライバシーを保ちつつ追加コストなし」であるのは大きい。「初めて試すエージェンティックAI」がApple Intelligenceという人も増えるだろう。
もちろん、そのためには第3世代Apple Intelligenceが十分に実用的である必要がある。2年前と違い「今度は有用」かどうかは、実際に試してみるまでわからない。



