演者は230km先?VTuberライブを3拠点でリモート制作、ヤマハがInterop Tokyo 2026で実証
演者は230km先?VTuberライブを3拠点でリモート制作

無数のネットワーク機器が並ぶ展示会場に、バーチャルキャラクターのライブステージが現れた。ヤマハは6月10日から12日まで幕張メッセ(千葉市)で開催した技術展示会「Interop Tokyo 2026」で、静岡・神奈川・千葉の3拠点を結び、VTuberの音楽ライブをリアルタイムでリモート制作する実証実験を公開した。

3拠点を結んだリアルタイムリモートライブ

同実験は会場内に構築する実験ネットワーク「ShowNet」の「Media over IP特別実験」の1つとして実施。会場のスクリーンに大きく映し出されたバーチャルキャラクター「白銀・R・いろり」さんが、楽曲「ノラリクラリズム」を披露した。スクリーンの中に現れた白銀・R・いろりさんが客席に向かって「見えていますよ〜」と語りかけ、観客が手を振ると即座に反応が返ってくる。まるで、すぐ目の前でライブをしているかのようだった。

ところが、このVTuberライブの配信スタジオは幕張メッセの会場にはない。演者は約230km以上離れた静岡県浜松市のヤマハ本社に、映像と音響を制御するスタッフは、横浜市のヤマハ横浜オフィスにいた。会場の幕張と浜松、横浜という3拠点を結んでリアルタイムに作り上げられた、リモートライブだった。

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同実験では、白銀・R・いろりさんが自ら音響ライブ制作の仕組みを解説。楽曲の披露前にはデモンストレーションも実施した。「照明さん、赤くして」という掛け声に合わせて画面内のCG空間と幕張会場の照明が間髪入れずに同じ色へ切り替わる。体感上は、コンマ数秒程度の遅延に感じた。

低遅延を支えた2種類の回線

ではどうやって、遅延を抑えつつ3拠点を結んだのか。拠点間は、性質の異なる2種類の回線でつないだ。浜松と幕張の間はソニービズネッツワークスが提供するベストエフォート型回線「NUROアクセス」で、幕張と横浜の間はNTTドコモビズネスが提供する「IOWN APN」で接続した。APN(オールフォトニクス・ネットワーク)とは、光と電気の変換を繰り返す従来のネットワークと異なり、その変換をできる限り減らして光のまま信号を届けることで、低遅延かつ揺らぎの少ない広帯域通信を実現する技術だ。

この回線を土台に、ライブを次のように組み立てる。まず、浜松にいる演者の動きをセンサーで計測し、モーションデータとして横浜オフィスへ送信する。横浜オフィスのスタッフが、受信したモーションデータを基にキャラクターの3DCG映像を生成(レンダリング)。映像の切り替えや歌声と伴奏の音量バランスの調整も担い、完成した映像と音声を幕張メッセの会場へ届ける。

照明も遠隔で操作する。ヤマハの独自技術「GPAP」を活用し、CG空間に設置したバーチャル照明と幕張会場の照明が、動きと色を合わせて連動する。GPAPは、音声・映像・照明などの制御データを音声ファイル(WAVデータ)と同じ形式で扱う技術だ。

想定外の構成が、思わぬ収穫に

実は、この回線構成は偶然の産物でもある。同実験のプロデューサーを務める長島洋一氏によると、当初は浜松にもIOWN APNを引く計画だったが、準備期間の都合で一般回線に切り替えたという。だが、データ量の小さいモーションデータは一般回線でも送信に十分で、3DCGレンダリングなど重い処理を横浜と幕張に集約することで、ライブは問題なく成立した。

長島氏は、「ベストエフォートな回線でもライブができるというのは、いい意味で得られた知見だ」とし、当初は想定していなかった応用の広がりに手応えを見せた。

今後、回線事業者の協力が得られれば、5G SA(スタンドアロン)などモバイル回線を組み合わせた構成への発展もありうるとし、さらなる改善の余地があるとした。

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