化学メーカーの住友精化(大阪市)が、使用済み紙おむつの素材の一つ「吸水性樹脂(SAP)」を新品と同様の品質に再生する技術を開発した。再びおむつの素材として再利用する「水平リサイクル」を実用化するための実証設備を6月に兵庫県内で稼働させている。
新品と同等の吸水性能に再生
「新品のSAPの吸水性能と同等に戻せることが確認できています」――6月中旬、住友精化の姫路工場(同県姫路市)で担当者が力を込めた。SAPは、水分を素早く吸収してゲル状になって閉じ込める役割があり、素材そのものの重さの数百倍の水を吸水・保持できる。紙おむつやペットシートなどの日用品だけでなく、漏水を止める止水材として工業用製品にも使われている。
紙おむつを構成するパルプやプラスチックは建築材料やおむつの素材として再利用されている一方、SAPは吸水性が落ちることなどからリサイクルには課題が多かった。SAPを製造する住友精化では、令和4年から使用済みSAPをリサイクルして元の吸水性に戻す研究を開始。分解、精製、再生という3段階を経て、新品と同性能のSAPの再生に成功した。具体的にはSAPを分解した上で不純物を除去して再結合させる。
今後、工場で実用化に向けた実証研究を行い、12年度の販売開始を目指す。
増え続けるおむつ廃棄量
同社が紙おむつのリサイクルを急ぐ背景には、おむつの廃棄量が年々増加していることがある。環境省によると、一般廃棄物に占める紙おむつの割合は、5年度には5.5%(処理量216万トン)だったが、今後は12年度に6.6~7.1%、32年度には7.7~12.7%にまで上昇すると推計される。生産数量は6年に約176億枚で、少子高齢化により子供用が減少し、大人用が増加している。
焼却する際の課題もある。使用済み紙おむつは現在は大半が焼却されているが、水分を多く含むため燃やすのに大きなエネルギーが必要で、焼却炉の負担も大きい。環境省は12年度までにリサイクルの実施や検討を進める自治体数を150とする目標を掲げているが、5年度時点では実施しているのは21自治体にとどまる。
自治体でも対策進む
鹿児島県志布志市では6年から、紙おむつ専用ボックスを市内全域のごみステーション約470カ所に設置。使用済みの紙おむつは衛生用品大手の「ユニ・チャーム」の技術で取り出したパルプをオゾン処理で殺菌して再生、同社が再びおむつの素材として再利用している。
鳥取県伯耆町では、町内の病院や福祉施設、保育所などから使用済み紙おむつを回収し、燃料用のペレットに加工する装置を平成23年に導入。町営の温泉施設のボイラーで燃料として活用し、ガス使用量の3割削減を実現した。
住友精化の工場のある兵庫県では、今年度から県内の紙おむつの排出量調査を実施するとともに、市町やリサイクル業者、保育所などの排出事業者とともにおむつのリサイクルシステム構築に向けた検討会を開催する方針だ。
紙おむつを巡る現状について、総合地球環境学研究所の浅利美鈴副所長(環境工学)は「近年は大人用おむつやペットシートなど家庭ごみの中でのおむつ類の量が増え、病院や福祉施設でも膨大な量となっている」と指摘。衛生面から早期に処分する必要がある一方、リサイクルの実現には初期投資やコストが課題となるとした。そのほか、分別項目が増えるため市民の協力も必要だが、「おむつを捨てる場面を見られることに抵抗を感じる人もいる。社会に定着させるにはどのように回収するかがポイントになる」と話している。



