理化学研究所(理研)は、科学研究に人工知能(AI)を活用する「AI for Science」を推進するため、スーパーコンピューター「理究(りきゅう)」の運用を始めた。量子力学に基づき計算する量子コンピューターとスパコンを連携させるためのスパコン「ROQUO(ろっこう)」も整備した。
「理究」の性能と特徴
理究は、米半導体大手エヌビディア製の最新世代GPU(画像処理装置)を計1600基搭載し、超並列計算に強みを持つ。AIの学習や推論で多用される「8ビット浮動小数点演算」の性能は、運用中の国内最速スパコン「富岳」の約7倍にのぼり、毎秒100京回以上の演算性能を備える。
理研計算科学研究センター(神戸市)に今年3月に設置し、先月7日に運用を開始した。理究の名は、自然現象の背後にある「理」を、AIとスパコンを活用して「究める」意味を込め、また茶人の千利休と同音で親しみやすいことから、公募で決まった。
量子コンピューターと連携する「ROQUO」
一方、ROQUOはエヌビディア製の最新世代GPU計540基などで構成。富岳や、理研が同センターと和光地区(埼玉県和光市)に持つ方式の異なる量子コンピューターなどを連携させ、ハイブリッド(混成)コンピューティングの優位性を実証する。従来のスパコン単体では難しかった、新たな計算領域の開拓を目指す。
ROQUOは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業の一環で導入され、同センターで6月に運用を開始した。ROQUOの名は、地元の六甲山が街の発展を見守ってきたように、長く社会と研究に貢献するようにとの願いを込めてつけたという。
研究の自動化と富岳NEXTへの活用
責任者は「研究者に代わって仮説を立てて実験し、データを分析するなど多くの過程を自動化する。科学研究の産業革命を起こしたい」と強調する。研究を加速する基盤モデルの開発や、基礎科学から応用までの幅広い研究での活用が期待される。例えばプログラミングが苦手な研究者が、日本語などの自然言語で指示すると、AIがプログラムを書き、データを分析するといった活用を目指すという。
理研は、富岳の後継機で2030年頃に稼働する「富岳NEXT(ネクスト)」を富士通、エヌビディアと共同開発し、詳細設計に入った。シミュレーションでの実効性能を富岳の5~10倍に高めるほか、AIに必要な性能で世界最高水準を目指す。理究やROQUOを、富岳NEXTのシステムソフトウェアやアプリケーション開発などに活用する。
松岡聡センター長は先月24日の会見で「理究とROQUOの導入は、わが国のAI for Scienceや産業の革新のための、スパコンや量子計算の本質的方向転換の第一歩だ。富岳NEXTや将来の量子コンピューターへとつながっていく。富岳NEXTを1台作るのでは全然、足りない。あらゆる所で動く標準のソフトウェアやプラットフォーム(基盤)を作り、産業界も含め日本全体の研究者が使えるようにすることが、大きなテーマだ」と説明した。



