レッツノートは、2002年から2003年にかけて発売した「CF-R1」「CF-T1」「CF-W2」の3製品で「ビジネスモバイル」の地位を確立した。持ち運びに適した軽量化と、外出先でも安心な長時間バッテリー駆動を両立させたことが他社との差別化につながったが、開発チームは次の課題として「頑丈」に着目した。
満員電車での実地調査が始まり
持ち運ぶパソコンは机の上で使うものより過酷な環境に置かれる。当時、満員電車で通勤するビジネスマンのノートパソコンで液晶が割れる問題が発生しており、特に薄型化を追求した他社製品に多く見られた。レッツノートはこの問題に真っ先に取り組んだ。
2004年春、設計部門に配属された入社2年目の若手社員に、上司から「都内で最も混雑している満員電車に乗ってきてくれ」という最初の仕事が伝えられた。目的は、満員電車の中でノートパソコンにどれだけの荷重がかかるかを実地調査することだった。
東急田園都市線で100kgf近い荷重を計測
調査を担当した3人の若手社員は、JR東日本や都内の私鉄各社に電話し、混雑度をヒアリング。朝の通勤時間帯で最も混雑するのが東急田園都市線と判明した。前夜にホテルで測定機器をセッティングし、タフブックの天板にセンサーを貼り付けてバッグに入れ、服にもセンサーを装着した。人事部門には調査を証明する書面を用意してもらい、たまプラーザ駅から午前7時すぎに乗車し、渋谷駅を目指した。
混雑が最高潮に達する池尻大橋駅付近で計測した結果、ノートパソコンの天板には100kgf近い荷重がかかり、電車特有の振動が液晶パネルに悪影響を及ぼして割れる状況になることがわかった。
「耐100kg級」を実現した新構造
開発チームはこのデータを基に、ボンネット構造を改良。両端に緩やかなねじれを施し、中央部分に曲率6000mmの緩やかな曲面を組み込む3次元曲面ボンネット構造を採用した。液晶パネルの外周部には角状のパイプを張り巡らせた環状パイプ構造でフレームを強化した。開発現場には100kgf加圧振動試験機を導入し、2005年5月発売の「CF-T4」「CF-W4」で満員電車の圧力や振動に耐える頑丈さを実現した。
パナソニックは「軽量、長時間はあたりまえ。時代は『タフ』を待っていた」をキャッチフレーズに「タフモバイル」を打ち出し、「耐100kg級」をレッツノートの新たな基準とした。
76cmの落下試験と防水・セキュリティ対策
頑丈の追求は落下への対応にも及んだ。破損原因を調査すると机からの落下が多く、開発者たちは家具屋で様々な机の高さを測定。輸入家具に多い76cmを基準に落下試験を導入した。ハードディスク保護では、従来のダンパーに代わり、異なる材料を組み合わせた「PETフィルム複合ダンパー」を開発し、落下時の衝撃値をピーク時で半減、他社比4倍の性能を達成した。液晶画面周囲の凸形状クッションやパームレスト両端の凹形状くぼみも落下耐性に貢献した。
2007年3月発売の「CF-R6」では76cmの落下に耐える構造を実現。防水シートと継ぎ目のないシーリング構造による防滴、充電率上限80%のエコノミーモードによるバッテリー長寿命化、セキュリティチップ搭載などの対策も「頑丈」の要素として取り入れた。
軽量化と薄型化のさらなる挑戦
この間も軽量・長時間への挑戦は続き、「CF-T4」で約12時間のバッテリー駆動、「CF-R6」で930gの軽量化を達成。2006年5月発売の「CF-Y5」では約0.2mm厚の液晶パネルを採用し、世界最薄肉となる0.55mmのマグネシウム成型も実現した。薄型化による強度課題には、キャビネット強化やフローティング構造、底面へのボンネット構造採用で対応した。
レッツノートは、現場の声を聞き、設計・生産・評価の仕方とパートナーとの共創を進化させることで、軽量、長時間、頑丈という要件をクリアしてきた。



