暗号資産市場が「冬の時代」と呼ばれる低迷期にある中、メルカリ傘下のメルコインが攻めの姿勢を見せている。コインチェックとの提携により、取扱銘柄を従来の3銘柄から一気に15銘柄へと5倍に拡大。休眠状態にある約200万口座の活性化を狙う。
固定費を抑えた拡張戦略
銘柄を追加するごとに、審査や流動性の確保、日々の運用、セキュリティ体制の構築が必要となる。メルコインの中村奎太CEOは「自社でやることも検討したが、スピード感と安全性を両立させるには他社と組むのが最も合理的だと判断した」と語る。この提携により、固定費を大きく増やすことなく、一気に銘柄数を増やすことが可能となった。
収益構造はレベニューシェア
コインチェックが受け取るのはAPI利用料ではなく、新規12銘柄の取引で生じるスプレッドの一部だ。取引が増えるほど両社の収益が増える仕組みで、中村氏によれば「構造上はメルコイン単独でのビジネスとかなり近い」という。一方、コインチェックは広告費をかけて新規顧客を獲得する代わりに、400万口座を抱える日常アプリの裏方に徹する。
CaaS(クリプト・アズ・ア・サービス)の先駆け
この提携は、単なる2社間の協業にとどまらない。消費者接点を持つアプリ事業者と交換業インフラを持つ事業者が分業するモデルは、暗号資産サービスの組み込み型金融化の先行例となる。コインチェックの井坂友之社長は、CaaSのターゲットを金融機関からゲーム・エンタメまで幅広く想定し、強みを取引の流動性と30以上の取扱銘柄数に置く。
制度面の追い風
6月1日から始まった「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」は、交換業ライセンスを持たない事業者がこの基盤に乗るための枠組みだ。井坂氏は「今回の取り組みが1つの大きなやり方として、デファクトスタンダードのような形になればいい」と期待を寄せる。価格面では冬の時代が続くが、制度面では雪解けが進みつつある。



