ドローンが「新しい戦い方」を実現する手足だとすれば、頭脳となるのがAI(人工知能)だ。人間に処理できない膨大な量のデータを瞬時に分析し、標的の発見から攻撃に至る一連のプロセス「キルチェーン」を大幅に短縮する。AIをより活用できた側が、戦場を有利に支配すると考えられている。
米軍のAI活用、二つの側面
軍事分野でのAI開発が世界で最も進んでいるのが、米国だ。対イラン軍事作戦では二つの側面でAIを活用している。
一つ目は、司令部の意思決定支援だ。米国防総省の最高デジタルAI責任者(CDAO)のキャメロン・スタンリー氏は5月の米議会公聴会で、AIが米軍の作戦展開にもたらした革新を「かつて数日かかっていたことが、今では数秒で行われる」と表現した。
米国は2月に対イラン軍事作戦を始めて以降、38日間で1万3千という圧倒的な数の標的を攻撃した。スタンリー氏は、こうした従来と全く異なる規模とスピードの攻撃を可能にしたのが、AI指揮統制支援システム「メイブン・スマート・システム」だと強調した。
米データ解析企業パランティア・テクノロジーズが基幹部分を担うシステムで、衛星画像やドローン映像、通信情報など膨大なデータを統合し標的の優先順位づけや攻撃計画の作成など軍の意思決定を支援する。
現場でのAI活用と開発の起源
二つ目が、現場におけるAI活用だ。AI搭載無人機の開発でも知られる米防衛テック企業アンドゥリルのマシュー・ステックマン社長兼最高ビジネス責任者(CBO)は、3月のポッドキャスト番組で「我々は現在の中東紛争に深く関与している」と明かし、イラン製自爆型ドローン「シャヘド」の脅威に対抗し、高度な防空システムを構築していると語った。
対イラン軍事作戦でフル活用されるAIは、実は米軍による長期間の研究で開発されたものだ。起源は2010年代半ばに国防総省内で始まった「サード・オフセット戦略」と呼ばれる研究・開発プロジェクトにさかのぼる。「AIなどを使って敵より速く意思決定する」ことを目標とし、その研究の流れの中で現在の「メイブン・スマート・システム」が生まれた。
米国のAI開発に詳しい日本の防衛省幹部は「米軍は10年かけてAI開発を進め、パランティアやアンドゥリルに米軍の豊富な戦闘経験のデータを学習させ、基盤を作り上げた」と語る。
日本はAIの国産開発にこだわるも…
防衛省・自衛隊も「新しい戦い方」への対応を急いでいる。年内に策定される日本の安保3文書でも「新しい戦い方」が打ち出される見通しだ。戦争による技術革新で何が起き、日本はどう対応するのか。その最前線が焦点となる。