EVバス普及率1%、価格や充電設備が壁 30年度5%目標に課題
EVバス普及率1%、価格や充電設備が壁 30年度5%目標

バス業界で電気を使ったEVバスの導入が始まっている。日本バス協会は政府の方針に沿って会員事業者の保有バスの「非化石エネルギー」化を進める。国産車の投入も進む中、車両価格や充電設備など普及への壁は厚い。

知多バスはEV化率21%、全国最高レベル

愛知県半田市に拠点を置く知多乗合(知多バス)では、16台のEVバスが自治体と組むコミュニティーバスや路線バスとして走っている。現在のEV化率は21%に達し、全国でも最高レベルだ。榊原研二・常務執行役員は「自治体側の希望を取り入れながら、更に増やしていきたい」と話す。

国土交通省によると、バスの輸送量あたりの二酸化炭素排出量は、自家用乗用車の半分以下だ。それでもバス業界が脱炭素を急ぐのは、政府が2050年に温室効果ガス排出実質ゼロの方針を掲げているためだ。30年度までに保有バスの5%で排出ゼロを目指す。

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価格高騰と充電設備不足が壁に

しかし車両価格が高いことや、充電施設への投資などが導入の壁となっている。バス協会の調査では、24年度末、回答した事業者が持つバス約8万5000台のうち、EVバス(電池搭載型、燃料電池型)の割合は1%程度にすぎない。30年度までに5%を達成するには、今後5年での急拡大が必要だ。

国産車の選択肢増、中国BYDも攻勢

供給側では国産車の選択肢が増えてきた。いすゞ自動車は24年5月、大型路線バス「エルガEV」を発売した。日野自動車も同年10月、「ブルーリボンZ EV」を投入した。三菱ふそうトラック・バスは台湾の鴻海精密工業と組み、排出ゼロのEVバス生産を手がける計画だ。

供給力で期待できるのが中国BYDだ。同社の国内の累計導入は500台に達し、保有台数に占める国内シェアは7~8割とされる。BYDジャパン商用車部門は今年7月、名古屋市に全国6か所目の営業所を設け、日本バス協会にも加盟し、事業拡大に積極的だ。世界各地のニーズに合わせた仕様の車両供給で実績を積み上げている。

信頼性と運用面の課題

EVバス導入には、品質に対する信頼性も問われる。大阪メトロは今年3月、大阪・関西万博の輸送などに使ったEVバス190台について、安全性を確保できないとして今後使わないと決めた。問題のバスが中国製だったため、来年3月に横浜市で開幕する国際園芸博覧会の来場者輸送には、中国製を採用せず、国産EVバスを導入する動きもある。

EVバスを30年度に5%まで増やすには、メーカーの信頼性向上、供給能力拡大に加え、車両購入から充電設備、保守を含めた事業者の費用負担を軽減できるかが課題となりそうだ。

暖房使用で走行距離減、水素インフラ不足も

EVバスには運用面の壁が残る。いすゞ自動車の「エルガEV」は、1回の充電で走行可能な距離を国土交通省の審査値で360キロとしている。一般的にEVバスは運行経路や1日の走行距離をあらかじめ見通しやすい路線バス向けで、長距離を走る貸し切りバスや観光バスには、導入が難しいとされる。

寒冷地では暖房による電力消費も課題となる。ディーゼルバスは、エンジンの余熱を車内に取り入れた暖房が可能だが、内燃機関がないEVバスは、電気を使った空調に頼ることになる。寒い時期は暖房による電力消費が増え、その分走行距離が縮まる。

いすゞは今年7月、エルガEVに軽油の暖房装置を備えた寒冷地仕様を加えた。電気消費量を抑え、走行距離の確保につながるが、軽油を燃料に用いるため、排出ゼロという前提からは離れる。

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水素を用いた燃料電池型のEVバスを選択する事業者もある。比較的長距離走行も可能だが、水素充填施設が少なく、「水素を補給するために、拠点から20分かけて行かなければならない」(大手バス業者)との声もある。現状の燃料電池型の保有台数は、電池搭載型EVバスの4分の1程度にとどまっている。