アジア大会カバディで「連呼」が聞こえない理由 プロリーグ化でルール曖昧に
アジア大会カバディで「連呼」が聞こえない理由 プロ化で曖昧に

愛知・名古屋アジア競技大会で行われているカバディ。選手が「カバディ、カバディ、カバディ……」と連呼してプレーするスポーツとして知られるが、実際の会場ではその言葉を聞くことはほとんどない。声が小さいわけではなく、選手たちはほとんど言葉を発していない。あるルールの導入がきっかけで、連呼のルールが曖昧になっているようだ。

「カバディ」が聞こえない試合

21日、愛知県東海市の東海市民体育館でカバディ競技が始まった。男子日本代表は初戦でインドと対戦し、24―49で敗れた。女子もイランに20―63で負けた。

カバディは、鬼ごっことドッジボール、さらにラグビーが融合したような競技だ。横長のコートを中央で分け、相手陣地と自陣に分割する。攻撃側は1人を相手陣地に送り込み、相手選手にタッチして自陣に戻ると得点が入る。守備側は攻撃者にタックルのようなことをしたり、足を持ったりして帰陣を阻止する。タッチされたり、自陣に戻ることができなかったりする場合は、コート外で待機となる。

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この日の男女の試合でも、両チームは果敢に攻撃をしかけた。インドやイランの選手は長い手足や強い身体能力を生かし、日本は俊敏な速さを武器に勝負をしていた。しかし、試合中に会場内で「カバディ」という言葉が選手から聞こえてこない。歓声のせいではなく、選手たちの口元もはっきり動いていない。

「呼吸」が重要な理由

日本カバディ協会によると、途中で息継ぎすることなしに「カバディ」という単語を繰り返すことを「キャント」と呼び、相手陣地に入った攻撃手を「レイダー」と呼ぶ。競技規則では、「レイダーは相手チームのコートに触れる前から、自陣コートに戻るまでの間、キャントを唱え続けなければならない。キャントを唱えない、不明瞭、あるいは明らかな息継ぎをした場合、「キャントアウト」となり、シッティングブロック(コート外)で待機。相手チームに1点が入る」とある。

審判は口元を見て明らかな息継ぎをしていないか、口の動きが不自然でないかを見る。それでも、「キャントアウトを取られることは稀です」と、アジア大会にも出場経験がある元日本代表選手は声を潜める。

以前はしっかりとキャントをしていたが、それでも小さくささやくように唱える人が多かったという。跳ね、走り、相手のタックルをかわしてプレーするためには、なるべく小声にして息を長続きさせることが重要だ。ただ、ばれないように息継ぎをして、長く攻撃する選手もいたようだ。

きっかけは「30秒ルール」

しかし、2014年に風向きが変わる。協会関係者や元代表選手によると、この年、インドでカバディのプロリーグが設立され、同時に「30秒ルール」が導入された。これは、レイダーが相手陣地に入って攻撃できるのは30秒までと定めたルールだ。元代表選手は「ばれないように息継ぎをすれば、いつまでも攻撃できますからね。プロの試合はショーとして面白いかも重要ですから、攻守の切り替えを活発にさせるために制限時間を設けたということだと理解しています」と語る。国際大会でもこのルールは採用されている。

もともと、聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさで「キャント」する選手が多かったためか、30秒ルール導入で「キャント」はますます重視されなくなっていった。それでも、「カバディ」が競技名になっているためか、ルールには残り続けている。選手によっては、口を半開きにしたり、唇を形式的に動かしたりして、それぞれの方法で「ごまかしている」のが実情のようだ。

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それでも、カバディの面白さの本質は変わらない。レイダーは、パワーや俊敏性で相手の妨害をかいくぐり、守備側は、レイダーとの駆け引きやチームワークで相手を止める。緩急ある試合展開や身体のぶつかり合い、レイダーが華麗に妨害をかわす姿は見ている人を興奮させ、「カバディっていう言葉が聞こえない」というちょっとした物足りなさを十分に埋めてくれる。今大会に出場している選手の一人も、「僕も競技を始めたときは驚いて、イメージと違ってちょっとがっかりしました。でも、それを差し引いても面白いスポーツです。アジア大会をきっかけに、まずはカバディを見てほしい」と話している。