上海サファリパークで10頭超のヒグマが男性襲撃、死亡事故の衝撃
上海サファリパークでヒグマ襲撃、26歳男性死亡

冬眠シーズンが明け、日本各地でクマによる事故が相次いでいる。クマ問題を取材する中野タツヤ氏は「クマによる被害は北海道・東北の山間部などの特殊事情ではなく、都市部でも起こり得る。例えば2020年に中国・上海で起きた事件がある」と指摘する。

クマ被害は都市部に関係ないのか

日本全国でクマが大量出没し、悲惨なニュースが大きく報じられた2025年が過ぎ、2026年も半分が経過した。クマ類の冬眠が明ける4月ごろから各地で出没情報が報じられ、被害が本格化する初夏から秋にかけてが本番となる。このままの状況が続けば、2026年もクマに振り回される一年となりそうだ。

しかし、北海道・東北や山間部の住民を除けば、関東以南の都市部住民の大半はクマ被害にリアリティを感じていないのではないか。都会の人々にとって、クマが人を襲うニュースは自分とは関係のない遠くの出来事に過ぎない。東京は世界でも珍しい「クマが生息する首都」だが、23区住民でクマを恐れている人はほとんどいないはずだ。

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安全な場所で「予想外のリスク」

筆者は都会の人の認識が間違いだと言うつもりはない。実際、都市部の人がクマにおびえる必要はない。確かに、東京農工大学の小池伸介教授のように、多摩地区の山あいに生息するツキノワグマが多摩川河川敷に侵入すれば府中あたりまで進出しうる、つまり「クマは都心までやってくる」と指摘する識者もいる。しかし、実際にクマが都心部に出没する可能性は極めて低い。人間の気配を嫌うクマが住宅密集地まで移動して餌を探す状況は考えにくい。

ただ、クマによる被害は都市部でも起こりうる。山間部など「田舎」だけの特殊事情ではない。クマの被害はいつどこで発生するか予想できず、絶対安全だと思われていた場所でも意外な形で発生することがある。

事件が起きたのは中国「最高ランク」動物園

事件が起きたのは、中国上海市にある上海野生動物園(上海サファリパーク)だ。同園は中国国家観光局が認定する「AAAAA級」という最高ランクの観光地であり、上海市内有数の人気施設である。広大な敷地に多くの動物が飼育され、来園者はバスに乗って動物を間近で観察できる。

動物好きの26歳が就いた天職

2020年、この動物園で悲劇が起きた。被害者は当時26歳の男性飼育員で、幼い頃から動物が大好きで、念願叶ってこの動物園に就職したばかりだった。彼は飼育エリアの清掃や餌やりなどを担当しており、仕事に誇りを持っていたという。

クマ飼育エリアで撤去作業を行っていた

事件当日、彼はヒグマの飼育エリアで、倒木や不要な構造物を撤去する作業を行っていた。本来、このような危険な作業は、クマを別の場所に移動させてから行うべきだった。しかし、何らかの理由で、クマがいる状態で作業が行われた。

「ルール違反の運転手」を助けようとして

作業中、園内の運転手がルール違反を犯し、クマのエリアに車両を進入させてしまった。これに驚いたクマたちが興奮し、男性飼育員に襲いかかった。男性は同僚を助けようとして、自ら危険な状況に飛び込んだとされる。

10頭以上のヒグマが群がる地獄絵図

10頭以上のヒグマが男性に襲いかかり、爪を立て、噛みついた。他の飼育員たちはすぐに通報したが、クマを鎮静化させるには時間がかかり、男性はその場で死亡した。遺体は損傷が激しく、目を覆いたくなるような惨状だったという。

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ネットに流出した凄惨な動画の全貌

事件の一部始終は、園内の監視カメラに記録されていた。その映像が何者かによってインターネット上に流出し、世界中に衝撃が広がった。動画には、ヒグマの群れが男性を襲う凄惨な様子が映っており、中国国内でも大きな波紋を呼んだ。ネット上では動物園の安全管理体制を批判する声が殺到した。

経営トップの責任はうやむやに

事件後、上海野生動物園は一時閉鎖され、調査が行われた。しかし、経営トップの責任は明確にされず、数人の現場責任者が処分されるにとどまった。動物園は数週間後に営業を再開し、現在も多くの来園者で賑わっている。中国メディアはこの事件を大きく報じたが、すぐに他のニュースに埋もれてしまった。

動物の安全管理は「社会全体の問題」

この事件は、動物園やサファリパークにおける安全管理の重要性を改めて浮き彫りにした。来園者の安全はもちろん、そこで働く飼育員の安全も確保されなければならない。クマに限らず、大型の野生動物を扱う施設では、常に危険が伴う。ルール違反や手順の省略が、取り返しのつかない悲劇を招くことを、この事件は示している。

日本でも、各地でクマの出没が続く中、私たちは「自分は大丈夫」という油断を捨て、常にリスクを認識する必要がある。動物園やサファリパークは楽しい場所だが、その裏には厳格な安全管理があることを忘れてはならない。