成年後見人の報酬実績を初めて公表 相場観の透明化で利用促進へ
最高裁判所は、成年後見人の報酬額実績を初めて公式サイトで公表した。この取り組みは、全国の家庭裁判所が決定した後見人らへの報酬額を集計し、透明性を高めることを目的としている。公表されたデータによれば、弁護士など専門職が後見人を務める場合、年間報酬は20万円台から30万円台となるケースが多く、利用者の財産規模が大きいほど報酬も高くなる傾向が明らかになった。
制度の概要と報酬決定の仕組み
成年後見制度は、2000年に高齢社会を支える仕組みとして導入された。認知症や障害などで判断能力が低下した人の財産管理や生活支援を担うもので、利用者の能力に応じて「後見人」「保佐人」「補助人」の3種類が存在する。家庭裁判所が後見人を選任し、預貯金の管理や施設入所契約など、多岐にわたる業務をサポートする。後見人には弁護士や司法書士などの専門家のほか、親族も就任可能だ。
報酬額については、東京や大阪の家庭裁判所が「通常の後見事務は月額2万円」といった目安を示しているものの、統一された基準はない。実際の報酬は、業務の量や質、利用者の財産状況を考慮し、家庭裁判所の裁判官が個別に決定している。現在、制度の利用者は2024年末時点で約25万人に上り、2040年には認知症の高齢者が約584万人に達すると推計される中、政府は報酬額の見通しを立てやすくするよう、裁判所に早期の整理を求めていた。
報酬実績の詳細と今後の課題
最高裁判所は、全国の家庭裁判所が2023年7月から12月にかけて決定した約10万2400件の報酬額を集計し、公表した。データは、後見人の属性、管理する流動資産の額、付加報酬の有無によってグループ分けされている。例えば、親族以外の専門職が後見人を務め、管理資産が1000万円未満で付加報酬を求めた場合、報酬は年20万円台から30万円台が約8割を占めた。一方、管理資産が1億円以上になると、同水準の報酬は1割弱に減少し、年100万円以上が約2割に達した。
制度をめぐっては、利用者から「報酬額に見合わない対応」といった不満の声も上がっている。最高裁判所家庭局は2023年、国会で「報酬が利用者の大きな負担になっている場合がある」と説明し、2025年には「利用者にとっての予測可能性を確保することが重要だ」との見解を示した。専門家からは、今回の公表により相場観が明確になり、制度利用の促進につながる可能性が指摘されている。
しかし、専門性の高い業務にもかかわらず報酬が低すぎるという課題も存在する。日本弁護士連合会の調査では、弁護士の約16.5%が利用者の財産が少ないため無報酬での業務経験があると回答。住居確保や福祉サービス、医療契約など複雑なケースでは後見人の負担が増大するため、報酬額が低いとなり手不足を招く恐れがある。
低所得の利用者向けに自治体が報酬費用を助成する「成年後見制度利用支援事業」もあるが、助成額は自治体によってばらつきがあり、適正な支援を受けられないケースも報告されている。専門家は、法律で定めた額を一律に助成するなど、制度の見直しが必要だと訴えている。
政府は2024年4月、後見人と保佐人を廃止して補助人に一本化する民法改正案を閣議決定。今後の国会審議では報酬問題も議論される見込みだが、家庭裁判所が報酬額を決定する仕組み自体は変更されない方針だ。制度の透明性向上と持続可能な運用が、今後の重要な課題となっている。



