法テラスの弁護士費用返還請求を熊本地裁が棄却、弁護士に返還義務なしと判断
日本司法支援センター(法テラス)が成年後見制度を利用する女性のために立て替えた弁護士費用について、支払いを受けた弁護士が返還義務の不存在確認を求めた訴訟の判決が4日、熊本地方裁判所で言い渡された。平井健一郎裁判長は、原告である田上裕輝弁護士(熊本県弁護士会)の主張を認め、8万6400円の返還義務はないとの判断を示した。
手続き切り替えを巡る費用返還請求の経緯
法テラスは、経済的に困窮する人々が成年後見制度の申し立てを行う際、弁護士費用を立て替える支援を行っている。今回のケースでは、田上弁護士が2023年11月、女性の「保佐人」の選任手続きを担当する着手金などの名目で、法テラスから10万8000円の支払いを受けていた。しかし、その後、支援の必要性がより高い「後見人」の手続きに切り替えたところ、法テラスは要件を満たさないとして、田上弁護士に8万6400円の返還を請求した。
判決の主な理由と法的判断
熊本地裁の判決は、法テラスが実質的に後見開始の審判を受けたことのみを理由に、弁護士費用の立て替え開始決定を取り消していると指摘した。女性は手続きが終了する前に立て替えを打ち切られ、弁護士に委任できない不利益が大きいと判断された。さらに、この打ち切りは消費者契約法に違反し、無効であると結論づけた。判決文では、法テラスの対応が手続きの円滑な進行を妨げ、女性の権利保護に支障を来す可能性があることを強調している。
田上弁護士は、判決について「適切な法的判断が示され、弁護士業務の安定性が確保された」とコメントした一方、法テラス側は「判決内容が確認できておらず、現時点ではコメントできない」としている。この判決は、成年後見制度における費用立て替えの運用や、消費者保護の観点から今後の議論を呼びそうだ。
成年後見制度は、認知症や精神障害などで判断能力が不十分な人を支援するための制度であり、法テラスはその利用促進を図っている。今回の訴訟は、制度の実務面での課題を浮き彫りにし、費用負担や手続きの透明性に関する見直しの必要性を提起している。



