再開発で量産される「同じような街」に疑問 ハーモニカ横丁の仕掛け人
再開発で量産される「同じような街」に疑問 ハーモニカ横丁

再開発で量産される「同じような街」 それっておもしろい?

東京・吉祥寺の「ハーモニカ横丁」は、戦後の闇市の面影を残しつつ、レトロとモダンが混然一体となった路地裏商店街だ。住みたい街ランキングで常連の吉祥寺の顔として、昼夜問わず多くの人でにぎわう。細い路地には100店舗以上の小さな店がひしめき、3坪ほどの飲食店ではカウンターで客が肩を寄せ合って食事をし、笑い声が漏れる。

しかし、この横丁も再開発の波にさらされている。東京都内の歴史ある商店街では、なじみの店が消え、タワーマンションが建設されるケースが増えている。そんな中、ハーモニカ横丁の仕掛け人と呼ばれる手塚一郎さん(79)は、再開発で量産される「同じような街」に疑問を投げかける。

「嫌なんだよ、分かりやすいのは」

手塚さんは1998年、シャッター街になりかけていた横丁でカフェバー「ハモニカキッチン」を開業した。「魚屋の隣に青山にあるようなこぎれいなカフェがあったら面白い」という発想が当たり、若者が集まった。続いて開いた焼き鳥店では、ショーウインドーに巨大な人形を置いたところ、子どもたちの人気スポットに。手塚さんは「分かりやすい言葉でくくられないように意味不明にしたい」と語る。「嫌なんだよ、分かりやすいのは。分かったっていう瞬間におもしろくなくなる」と述べ、お客さんが驚くような、予想を裏切る店が面白いと強調する。現在は横丁内に11店舗を展開している。

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そんな手塚さんの思想とは真逆にあるのが、再開発された街だ。「渋谷なんかはガンガン新しい店ができてすごいけど、中に入っている店をよく見るとレパートリーが決まっていて、どこも同じような街を同じようにつくっている感じ」と指摘。景色が均一化し、「街の人たちが時間をかけてつくってきたものではなく、みんながいいと思うありきたりなものを持ってきているだけだから、深みがない」と嘆く。

火災や地震のリスクと再開発のジレンマ

しかし、ハーモニカ横丁も安全面で課題を抱える。古い木造建物が密集し、火災や地震のリスクがあるため、昭和の時代から再開発の話が浮上しては消えてきた。横丁内でも意見は割れており、商店街組合の小松由美会長(62)は「開発したい人は多く、年に何度か業者が図面を持って訪ねてくる」と明かす。小松さんは「子どもの代のことを考えると、ある程度きれいにしたほうがいい」と感じつつも、新宿や渋谷のような「どこにでもある駅前ビル」になるのは避けたいという。

地元の武蔵野市は2021年、吉祥寺の街づくりの指針「NEXT吉祥寺2021」を策定。ハーモニカ横丁については、耐震性や耐火性の高い建物への誘導を図るとしているが、行政も再開発には慎重だ。担当者は「行政の押しつけでやっていくのは難しい場所。まちづくりの名の下に強制的に生活や営みをつぶすことは是ではない」と説明。吉祥寺を象徴する場所だけに、「こぎれいにすればいいというものでもない」と悩みを打ち明ける。

手塚さんは、小さくて狭いという特性を生かしながら横丁を更新する方法を模索している。「ビルにして外側だけきれいにしても、人がいきいきしていなければ街の魅力は生まれない。すでにあるものに手を添えていくのが横丁。アイデアは絶対にあると思う」と語った。

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