水俣病教科書記述「克服」「乗りこえた」に患者側が異論、問題矮小化を懸念
水俣病教科書記述「克服」「乗りこえた」に患者側異論

水俣病の公式確認から5月で70年を迎えたことを受け、中学校の社会科教科書における記述をめぐり、患者側から強い異論が上がっている。「公害を乗りこえた」「公害問題を克服」といった表現に対し、「問題が終結したかのような印象を与え、被害が矮小化される」との懸念が示されている。教科書会社側は、国や公的機関の資料に沿った表現であると説明している。

元教員が教科書を精査

患者・被害者団体で構成される「水俣病被害者・支援者連絡会」のメンバーで、元教員の高木実さん(68)は昨夏、各教科書会社が発行する中学校社会科の教科書約15冊を詳細に確認した。高木さんは小中学校の教員として約40年間勤務し、これまでも教科書の記述に違和感を覚えたことがあったが、改めて目を通してその表現に衝撃を受けたという。

「生まれ変わった水俣市」という記述

教科書には「水俣市は、公害を乗りこえた」「公害問題を克服」「生まれ変わった水俣市」などの記述が見られた。高木さんは「まるで水俣病の問題は終わったことのように描かれている。患者や当事者がこの記述を見て、どう感じるだろうか」と疑問を呈する。

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きっかけは家庭教師の教材問題

高木さんが教科書を確認するきっかけとなったのは、家庭教師派遣会社「トライグループ」(東京)が、オンライン講座で「水俣病は遺伝する」という事実と異なる内容の教材を使用していた問題だった。昨年4月に発覚し、同社は謝罪し教材を非公開とした。トライ側は中学生の教科書を参考に教材を作成していたという。

連絡会は今回、5社の出版社から発行された地理、歴史、公民の教科書について、「事実と異なる、または不正確な記述」があると指摘。連絡会は「後ろ向きな国の姿勢が教科書に反映されている」と批判している。

「克服」の表現がもたらす影響

患者側は「克服」や「乗りこえた」という表現が、水俣病の問題が完全に解決したかのような誤解を生むと懸念。実際には、未認定患者の存在や健康被害の継続、地域社会の分断など、多くの課題が残されている。教科書の記述が、次世代の理解に影響を与えることを危惧している。

教科書会社は、文部科学省の検定基準や公的資料に基づいた記述であると説明。一方で、患者側の訴えを受けて、今後の改訂で表現を見直す可能性も示唆している。

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