漫画家・鳥飼茜さんが3度の結婚で直面した改姓の不条理
2026年3月5日、人気漫画家の鳥飼茜さんが、3度目の結婚を前に改姓の理不尽さに直面した経験を綴ったエッセー「今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった」(文芸春秋)を出版した。鳥飼さんは27歳だった2008年に最初の結婚をし、子ども1人をもうけたが2年ほどで離婚。2018年に再婚したものの、約3年で再び離婚している。2度の結婚とも、鳥飼さんが相手の姓に改姓したという。
改姓がもたらした「自分を捨て置く」感覚
鳥飼さんはインタビューで、過去の結婚について「女性は結婚で相手の姓を名乗ることが幸せ、というファンタジーや幻想に、自分は甘やかされていた」と振り返る。改姓直後は「この人の妻になったんだ」という感慨もあったが、次第に「失ったものが思いのほか多かった」と語る。
「改姓すると、その人の家のルーツを背負い、『嫁』という役を真面目に全うしなきゃいけないみたいな感じになってしまった」と鳥飼さんは説明する。相手に合わせたり、過剰に気に入られようとしたりする傾向があったため、「自分を全部、捨て置いてしまった」と当時を振り返る。
離婚後の復姓手続きの困難さ
日本では、結婚で改姓した人が離婚する場合、配偶者の姓をそのまま名乗るか旧姓に戻すかを選択できる。離婚後3カ月以内なら届け出で済むが、それを過ぎると家庭裁判所への申し立てが必要となる。
鳥飼さんが最初の夫の姓への「復姓」を思い立ったのは、2度目の離婚の翌年だった。子どもが最初の夫の姓を名乗り続けていたことや、本来の姓が難読文字だったことが理由として挙げられる。家裁の許可を得た後も、身分証明書や銀行口座の名義変更などの手続きの煩雑さから、2年間放置してしまったという。
改正戸籍法施行日に直面した新たな障壁
ようやく役所に手続きに行った日は、偶然にも戸籍名にふりがなが付される改正戸籍法の施行日だった。許可書にふりがなの記載がなかったため、「氏名の変更はできない」と告げられるという事態に直面した。
その頃、3度目の結婚の話が持ち上がっていた。鳥飼さんは「2度の結婚生活で自分らしさを失った背景には改姓がある」と考え、選択的夫婦別姓制度ができるまでの間、事実婚を選択しようと考えていた。しかし、最初の夫の姓に戻す手続きがやり直しとなり、3番目の夫の姓に改姓する方が簡単だと感じたという。
それでも法律婚を選ぶ理由
鳥飼さんは「1度や2度の失敗で結婚のすべてを否定するのは早い」と語り、3度目の結婚も法律婚にすることを決意した。その背景には、日本の法律婚制度に対する複雑な思いがある。
日本の結婚制度では、夫婦が同じ姓を名乗ることが原則となっている。このため、多くの女性が改姓を余儀なくされ、鳥飼さんのように複数回の結婚・離婚を経験する場合、手続きの煩雑さや精神的負担が重なる。鳥飼さんの経験は、選択的夫婦別姓制度の導入を求める声の一端を示している。
鳥飼さんは現在、漫画家としての活動を続けながら、自身の経験を基にジェンダー平等や結婚制度のあり方について発信を続けている。エッセーでは、改姓の不条理と向き合いながらも、結婚への希望を捨てずに前進する姿が描かれている。
