国旗損壊罪創設へ 高市政権が「超・前のめり」 学校現場からは「息苦しさ拡大」の懸念
国旗損壊罪創設へ 高市政権が「超・前のめり」 学校現場から懸念

国旗損壊罪創設へ動く高市政権 学校現場から「息苦しさ拡大」の警鐘

自民党と日本維新の会の連立政権が日本国旗を傷つける行為を罰する「国旗損壊罪」の創設を目指し、本格的な議論が始まった。3月31日には自民党のプロジェクトチーム(PT)で初会合が開催され、罰則の有無も含めた検討が進められる。しかし、高市早苗首相が「超・前のめり」と形容されるほど前向きな姿勢を示す一方で、自民党内には慎重論も根強く、憲法が保障する表現の自由との兼ね合いが大きな課題となっている。

東京都立学校の教職員が危惧する「全国への波及」

「国旗損壊罪が成立したら、学校現場はさらに息苦しくなるのではないかと心配している」。東京都内で開かれた集会で、都立特別支援学校教諭の田中聡史さん(57)はこう訴えた。2003年、東京都教育委員会が式典での国旗掲揚と国歌斉唱を義務付ける通達を出し、従わなかった教職員を懲戒処分にした問題は、現在も5次訴訟が続いている。田中さん自身も当事者の一人だ。

国旗国歌法は1999年に施行された際、当時の小渕恵三首相が「強制する趣旨のものではない」と説明した。しかし、東京都の教育現場では通達に基づく対応が続き、教職員への締め付けが強まっている。そんな中、国旗損壊罪の新設が現実味を帯びてきたことで、現場からは「都立学校の状況が日本中に広がる」との懸念が次々と上がっている。

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「万一の汚れ」も罪に? 教育現場の細かな管理強化

田中さんが勤務する学校では、卒業式の際に「国旗係」が設けられ、国旗のアイロンがけなど掲揚の準備を担当するという。「万が一、汚したりした場合、罪になる可能性がある。最悪の場合、警察によって取り調べを受け、故意なのかどうか思想信条を調べられる恐れがある」と危惧する。学校側が国旗に対していっそう配慮を強めることで、管理がさらに細かくなる可能性を指摘する声も少なくない。

都立学校では卒業式の実施要項を事前に都教委に提出するよう指導されており、そのチェックが年々厳しくなっているという。元都立高教諭の川村佐和さん(67)は「国歌斉唱と呼びかけた後、生徒や保護者らの起立状況を確認することを司会の役割として明記するようになった。屋外の国旗掲揚の位置を示した配置図の提出など、数年前はなかったことだ」と現場への締め付け強化を訴える。

自民党内に根強い慎重論 「内心の自由」侵す懸念

国旗損壊罪の創設に向けたPTの初会合では、これまで反対してきた岩屋毅前外相が慎重論を主張した。岩屋氏は自身のホームページで、国旗の損壊が至るところで発生しているという立法事実はなく、「政治的なアピールのための立法になりかねない」「憲法が保障する『内心の自由』や『表現の自由』を侵すものであってはならない」と訴えている。

自民党のある副大臣経験者は「党内には『議論は慎重に丁寧に進めるべきだ』という人が意外なほど多い」と明かす。「国民の内心を縛るような法律ではないと国民にしっかり説明しないといけない。そうしないと『戦前回帰』だとか言われかねない。だけど、高市さんが『超前のめり』だから、どうなるかね」と複雑な党内事情を語った。

高市首相の「名誉守る」目的に専門家から異論

高市首相は1月のネット討論番組で国旗損壊罪の制定目的を「日本の名誉を守る」と説明した。これに対し、慶応大学の駒村圭吾教授(憲法学)は「政府自体が根本的に国家をおとしめているような場合では、象徴的な言論行為として、むしろ国家の名誉を守る目的で国旗を焼くということがあり得る」と反論する。

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駒村教授は、仮に身体拘束などの罰則規定がなくても「日の丸を使いそうな集会・団体への公共施設の使用許可を躊躇したり、日の丸への敬意の表明を要求するようなムーブメントが広がる可能性がある」と指摘。「焦ってごり押しすれば、国民は、現在の政治家が『名誉ある地位』を失うような政治しかできていないと心配になるのではないか」と警鐘を鳴らす。

海外からの視線も考慮すべき 丁寧な国民的議論を

法政大学の白鳥浩教授(現代政治分析)は「日本はいま長射程ミサイルの配備や防衛増税などで『防衛強国』になりつつある。さらにナショナリズムを推し進めるような政策をとれば諸外国からどう見られるかということも考える必要がある」と指摘。法案を成立させる前に「今後の日本の国家像をどう捉えるべきかといった丁寧な国民的議論が必要ではないか」と提言する。

自民党執行部は4月末から大型連休前には法案をまとめたい考えとされるが、消費税減税とは異なるスピード感が目立つ。国旗損壊罪を巡っては、野党も保守層へのアピールを狙い動いており、参政党は2日に国旗損壊行為への刑罰を明記した刑法改正案を参院に提出した。今後の議論の行方が注目される。