「地元の店主は大企業社長より偉い」長妻昭氏が語る自民党強さの源泉と地域ネットワークの実態
「地元の店主は大企業社長より偉い」長妻昭氏が語る自民党の強さ

「地元の店主は大企業社長より偉い」――長妻昭氏が語る自民党の強さ

2026年2月の衆院選で自民党が歴史的大勝を収めた。東京でも全30選挙区を制覇し、"非自民が強い"とされてきた常識を覆した。しかし、その後の清瀬市長選や練馬区長選では自民支援候補が敗れ、組織の弱体化も指摘される。この「高市旋風」は一過性の現象なのか。今回、都内で議席を失った野党政治家3人に、自民党の実力を聞いた。前編は、東京27区で惜敗し比例復活した長妻昭氏(中道改革連合)の証言。

サラリーマン時代には見えなかった「もう一つの日本」

長妻氏は2000年の衆院選以降、2005年の「郵政選挙」を除き、東京7区(現27区)で当選を重ねてきた。2026年は自民党の黒崎祐一氏に約4000票差で敗れ、比例復活で10回目の当選。その経験から、自民党の強さの源泉を語る。

「初めて選挙に出て落選した時、『二つの日本がある』と痛感した。私はNECでサラリーマンとして働き、父親は警察官。そうした環境では、大企業の社長が『偉い』と思う世界に生きている。だが選挙に出ると、全く違う風景が見える。大企業の社長は地域選挙で大きな影響力を持たないが、商店街のタバコ店の店主は地域に人脈があり、数十票、場合によっては数百票に影響を与える。地元の小中学校に通い、商売や地域活動でネットワークを築いているからだ。そこに自民党はがっちり食い込んでいる」

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長妻氏の地元・中野区には100以上の町会があり、それぞれに町会長がいる。シニアクラブ、消防団、保護司、民生委員も存在する。「紛れもなく地元の有力者であり、いまなお自民党の影響力が強い。自民党はこうした有力者から支持を得る『ツボ』を熟知している。この人的インフラがある限り、自民党は強い。野党議員がこのネットワークに浸透するには、少なくとも10年かかる」

地域ネットワークの機能と野党のハンディ

このネットワークは具体的にどう機能するのか。長妻氏は「町会の新年会の情報一つとっても、野党には入ってこない。自民党には必ず情報が入る。それぞれの地域に区議など地方議員がいるからだ」と指摘。地域情報の入手で、野党は大きなハンディキャップを負っているという。

「野党議員がこのネットワークに浸透するのは難しい。東京ですら難しいのだから、地方はさらに厳しい。ただ、地域の商店も代替わりし、チェーン店に置き換わっている。地域のつながりが希薄になり、無党派層が増えている面もある。そうした人たちに政策を訴え、食い込む余地はある」

民主党政権の反省と企業献金の問題

長妻氏は民主党政権時代を振り返り、「10年政権を継続させるべきだった」と語る。「10年あれば統一地方選が2回あり、地域ネットワークに定着できる。自民党の底力は、どこに行っても地方議員がいて活動していることだ。首長も自民党系が多い。地域の要望への対応も、地方議会、首長、国会議員が一気通貫でできる。野党も勢力を伸ばさなければ対抗できない」

政治資金についても言及。「自民党と野党では資金力の差がけた違いだ。厚生労働大臣になった時、『年間1億円は集まりますよ』と言われた。私は企業・団体献金は受け取らず、パーティー券も企業や団体には買ってもらわない主義だが、長く政権についているとお金が集まる。OECD加盟国の多くは企業献金を禁止している。民主党政権時に企業・団体献金禁止法を強引にでも成立させるべきだった。後悔している」

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安定を求める有権者と変容する投票行動

自民党に不祥事があっても一定の票を集め続ける理由について、長妻氏は「政治に安定を求める人が一定数いる。われわれは不安定にするつもりはなく、安定のためには変革が必要だが、民主党政権のイメージもあり、『自民党しかない』と考える人はいる。これまでの生活を維持したい、壊したくないという人が自民党を支えている」と分析。

「高市旋風」については、「2024年の選挙と比べても街頭の雰囲気は変わらなかった。有権者の反応は良かった。ただ、投票日前日の土曜日から自民党候補に追い上げられている感覚があった。相手が高市首相と肩を組んだポスターを貼り出し、あれは脅威だった」と振り返る。

有権者の投票行動も大きく変化している。「選挙の勝敗は始まる前に決まっていると言われたが、今は全く違う。選挙の途中でも投票先がガラッと変わる。誰にでもチャンスがある時代になった一方、政党や政治家がある種の『消費財』のようになった」

組織票の衰退と自民党の強み

組織票はどんどん小さくなっている。「業界票や団体票は減っており、どの政党も悩んでいる。自民党も例外ではない。もはや『塊の票』は期待できない。今回の大勝も常勝パターンではなく、次は違ってくるかもしれない。ただ、自民党は全国津々浦々、特に地方では確固とした地盤を持つ地域がある。その点は強みだ」

最後に、野党が自民党から見習うべき点として、「自社さ連立で社会党の村山富市氏を総理大臣にしたような柔軟性。思想信条の違いを乗り越え、権力維持のために徹底していた。民主党政権時、野党となった自民党は『最強の野党』で、批判一辺倒の質問が多く、権力から引きずり下ろす執念はすさまじかった。政策を置き去りにしてはならないが、その執念と、異なる意見を取り込むしたたかさは見習う必要がある」と語った。