自民党が歴史的大勝を収めた2月の衆院選。東京都内でも全30選挙区を制覇する圧勝劇となったが、その後の清瀬市長選や練馬区長選では自民支援の候補が敗れ、組織の弱体化も指摘されている。今回、議席を失った野党政治家3人のうち、後編では東京9区の山岸一生氏と東京15区の酒井菜摘氏の若手2人が、地元で対峙した自民党の実力について語った。
敗因を振り返る
酒井氏は「チラシの配布具合や激励の声はこれまで通りで、終始手応えは良かった。接戦だと思っていたら3万票差がついて茫然とした。なぜ負けたか、蓋を開けるまで分からなかった」と振り返る。山岸氏は「負けを確信したのは投票日直前の金曜夕方の駅頭。終盤に向けて盛り上げるべき局面で、熱のない握手が多かった。日本経済を支える無党派のど真ん中から支持を得ないと勝てない中で、これはダメだと思った」と語る。
「高市旋風」の影響
酒井氏は「高市早苗首相が女性初の首相として戦ったことで、首相の激務を女性が頑張っている印象が強かった。政権支持率7割は驚異的だった」と分析。一方で「中道改革連合という新しい看板を短期決戦の中で十分に浸透させられなかった。立憲民主党と公明党出身者の共同代表制で、『私が首相になる』という見せ方ができなかった」と悔しさをにじませる。山岸氏は「明らかにゲームのルールが変わった。従来は地域の行事を回るなどコツコツ努力して票を積み上げてきたが、今回は一気に票が剥がれた。最近の選挙は個人の努力では抗えない構図になっている」と指摘する。
自民党の強さの源泉
酒井氏は「選挙にかけるお金と人の量が圧倒的に違う」と実感を語る。「江東区議会に自民党は10人以上いるが、立憲民主党は1人だけ。選挙期間中の週末、豊洲の駅前を朝から晩までジャックするなど運動員の数が違い、地域行事でも自民議員は必ず呼ばれるが、他党は呼ばれないこともある。企業献金などで資金も潤沢で、インターネット広告の量でも差がついている」と訴える。
山岸氏は「有力者の世代交代で地域に入り込む参入障壁は下がってきているが、組織のある政党は高齢化で弱まっており、相対的に自民党がまだ強い。東京では職場と住居が異なる選挙区の人が多く、無党派の支持頼みになりやすい」と分析する。
自民党に学ぶ点
山岸氏は「自民党は激しく意見をぶつけ合っても最後にはまとまる。権力獲得のために貪欲で、政権復帰直前には谷垣禎一氏から安倍晋三氏にトップを代え、石破茂氏の次に高市早苗氏を選挙の顔にするなど、不連続面を作って刷新感を出す姿勢は見習うべきだ」と語る。酒井氏も「野党では『呼ばれないから地域行事に行かない』という人もいる。貪欲に地域に入り込む努力が必要だ」と述べる。
今後の対峙の仕方
酒井氏は「政治への信頼がないから、有権者は変えることに抵抗を覚える。消極的に自民に入れ続けている人も多い。仲間を増やしながら『政権交代してもいいんだ』という空気を醸成したい」と語る。山岸氏は「SNS戦略が大事と言われるが、今回は生成AIが投票判断に使われ始めた選挙だった。『ChatGPTに聞いた』という声も聞いた。時代に合わせて戦い方を変え、AIに引用されるようなデータを発信する必要がある。自民党にはできない政策を見極め、そこを積極的に仕掛けるべきだ」と提言する。



