成年後見制度が「終われる後見」へ 2026年見直しで具体的事例を専門家が解説
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートは2026年2月、「成年後見は終われるか?」をテーマにシンポジウムを開催しました。認知症のある人や知的障害のある人らの財産管理や生活を支援する「成年後見制度」が大きく見直されることになります。これまで一度制度を使い始めたら、亡くなるまで終われないといった課題が指摘されていましたが、新制度では「必要なときに必要な支援」を受けられる「終われる後見制度」へと変わります。
遺産相続を例にした具体的なケース
実際にどのようなケースが想定されるのでしょうか。司法書士の団体である公益社団法人「成年後見センター・リーガルサポート」の中野篤子副理事長は、一例として遺産相続を挙げました。中野さんに、遺産相続で想定されるケースを具体的に聞きました。
認知症の高齢者と遺産分割の実例
80代のはるえさんは自宅で一人暮らしをしています。「要介護2」の認定を受けており、2年前に認知症の診断を受けました。介護サービスを利用しながら、近くに住む子どもや近所の人もはるえさんの生活をサポートしています。
そんなある日、はるえさんの弟・あきおさんが亡くなりました。あきおさんの遺産を相続する人は、はるえさんと、はるえさんとあきおさんの兄(すでに死去)の子・けんすけさんの2人です。
あきおさんの遺産は自宅と預貯金300万円でした。あきおさんは数年前から施設で暮らしており、自宅は空き家になっていました。管理が十分にできておらず、近隣住民から何とかしてほしいと言われていた状況です。
専門職の介入と補助人の役割
けんすけさんを交え、相続や家の売却について話し合った際、はるえさんは「なんとかしないといけないね」と話す一方で、「どうすればよいかわからない」と発言しました。
はるえさんの家族はこれからどうすればいいか、地域包括支援センターを通じて紹介された専門職に相談しました。専門職ははるえさんに相続について説明し、その後、はるえさんの子どもは家庭裁判所に「後見制度」の利用を申し立てることになりました。はるえさんも家裁に対し「手伝ってくれる人がいると助かります」との意向を表明しました。
家裁は、申し立て段階から関わり、事情を把握している専門職を「補助人」に選びました。補助人がはるえさんに遺産の意向を確認すると、はるえさんは「家はあっても仕方がないし、そのままにしておくとご近所にも悪いし」「財産はけんすけと私がもらったらよいですね」と述べました。
円滑な遺産分割と制度の終了
けんすけさんと遺産分割協議をして、家ははるえさん、預貯金はけんすけさんが相続することになりました。補助人は家の所有者をはるえさんとする相続登記をした後、家を売却しました。代金は、子どもが預かっているはるえさんの通帳に送金されました。
補助人は、遺産分割協議と不動産売却を終えたことと一連の経過を家裁に報告し、「補助の必要がなくなった」として終了を求めました。家裁がはるえさんに意向を尋ねると、「子どもが助けてくれるし、やっていけると思います」と述べました。家裁は補助の終了を決めました。
はるえさんは住み慣れた自宅で生活を続け、数年後に亡くなりました。この事例は、成年後見制度が「終われる後見」として機能し、特定の課題解決後に終了できる新たな可能性を示しています。
制度見直しの意義と今後の展望
成年後見制度の見直しは、従来の「一度始めたら終われない」という課題を解決し、より柔軟で利用者本位の支援体系を目指すものです。2026年の制度変更により、以下のようなメリットが期待されます:
- 必要な期間だけ支援を受けられる柔軟性
- 利用者の意思を尊重した段階的な支援
- 財産管理と生活支援のバランスの取れたアプローチ
- 家族や専門職の負担軽減
中野副理事長は「終われる後見制度」の導入により、認知症や知的障害のある人々が、自分らしい生活を送りながら、必要な時に適切な支援を受けられる社会の実現に近づくと指摘しています。制度の詳細な運用方法については、今後さらに議論が深められる見込みです。



