愛知・人口39人の過疎地区でコーヒースタンド 卒業後も故郷再生へ学び続ける学生の挑戦
愛知・人口39人の過疎地区でコーヒースタンド 卒業後も故郷再生へ (14.03.2026)

愛知・人口39人の過疎地区でコーヒースタンド 卒業後も故郷再生へ学び続ける学生の挑戦

大好きな場所を守りたい―。かつて「日本一のミニ村」と呼ばれた愛知県の旧富山村(現豊根村富山地区)の活性化に役立ちたいと、コーヒーの露店を出してきた学生がいる。名古屋外国語大学4年の熊谷琴美さん(23)。この春卒業し、地域おこしのコンサルティング会社に就職する。祖父母が暮らし、過疎が進む地区の再生ノウハウを学ぶためだ。

天竜川沿いの集落に香ばしい香り

静岡県境の佐久間ダムへ続く天竜川の雄大な渓谷沿いに集落が点在する富山地区。2月の休日、地区中心部の広場に可動式スタンド「URU」を出店する熊谷さんがいた。自然美を引き立たせるため「名脇役コーヒー」と銘打った一杯を振る舞いながら、バイクツーリングやレンタサイクルで訪れる観光客らに地区のおすすめ情報を伝えていた。

「遊ぶときも、街より山に行きたいなって思うんですよね」。幼いころ、自宅のある豊橋市から車で片道2時間以上かかる富山地区の祖父母宅を訪れ、川へ入ったり山を駆け回ったりした。店名の由来でもある漆島川も遊び場の一つだった。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

「富山が終わりに向かっている」との危機感

離島を除き人口が全国最少として知られた旧富山村は、2005年11月の合併でその名を消した。地区唯一の学校も2014年度で閉校に。当時小学生だった熊谷さんの記憶は鮮明だ。「富山がだんだん終わりに向かっている気がして、言葉にできない危機感を感じた」と振り返る。

大学進学後も抱き続けた富山への愛は、海外留学で自分を見つめ直したことでより膨らんだ。「行政でも企業でもなく、一個人でも盛り上げることができるのでは」。帰国後の2025年5月にURUを開業し、月数回ずつ出店。客に地区の魅力を伝え、村外の行事ではジャムなどの特産品を置いて富山の周知に努めてきた。

卒業でいったん休業も新たな展望

常連客も増えたが、卒業を機に3月末でいったん休業する。祖父の山下喜代治さん(74)は「若年層がいない地区だから、彼女のような活動がなくなるのは少し寂しいよね」と、接客する孫を遠目で見守った。

合併から20年を経て、富山村時代に200人を超えていた地区人口は2月末時点で24世帯39人に。旧村役場の支所は3月末で廃止され、郵便局が一部の行政事務を代行する。

熊谷さんにとって「面倒見が良くて、聞き上手な人が多い。温かさが自分にはドンピシャだった」という富山地区。そんな心のよりどころににぎわいを取り戻すため、卒業後すぐに新たな活動に入ることも考えたが、地方都市で文化財や古民家などの観光資源化に取り組む大阪市の企業を知り、新たな展望が開けた。4月から鳥取県で同社が運営するホテルで働く。

「全ては富山のため。働きながら、将来戻って何ができるか考えていきたい」。そう前を見据える瞳は輝いていた。

全国市町村の5割超が「過疎」に指定

国は人口減少率や高齢者比率、財政力といった要件に基づき、全国の5割を超える885市町村(2023年4月時点)を過疎関係市町村と位置付けている。このうち713市町村は全域が過疎地域とされ、富山地区がある愛知県豊根村もその一つだ。過疎関係市町村は人口では全国の9.3%だが、面積では63.2%を占める。

過疎関係市町村の人口は1960年には24.3%だったが、右肩下がりで減少。2020年時点で65歳以上の割合は39.7%と全国の28%より10ポイント以上高く、高齢化も著しい。財政面では、2021年度の歳入に占める地方税収の割合が12.6%と全国の29.3%を大きく下回っている。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

過疎関係市町村などを対象にした国のアンケート(2024年)によると、多くの集落で起きている問題や現象で最も多いのが「空き家の増加」(89.4%)で、耕作放棄地の増大(72.8%)、住宅の荒廃・老朽家屋の増加(71.6%)が続いた。