岐阜県が人事課を知事直轄に異例の組織改編、職員は原則1年で交代
岐阜県人事課を知事直轄に、職員は原則1年で交代 (04.03.2026)

岐阜県が人事課を知事直轄に移す異例の組織改編を実施

岐阜県は2026年度の組織改編において、人事課や行政管理課などを総務部から知事直轄の「知事公室」へ移す方針を明らかにしました。この改編は、都道府県知事の強い権限を背景にした極めて異例の措置として注目を集めています。地方自治に詳しい専門家からは「誰も知事を止められずに強権化が進む可能性がある」との懸念の声も上がっています。

知事の強力な権限と歯止めの仕組み

都道府県知事は選挙で直接選ばれるため、大統領制にも例えられるほど権限が集中しています。国会議員から指名される国の首相とは異なり、政策分野ごとに大臣を任命する必要がなく、知事部局の職員の人事権や約1兆円に近い予算の編成権を一手に握っています。

自治省(現総務省)出身で地方自治に詳しい名城大学の昇秀樹名誉教授は「権限が強すぎるので、人事課や財政課は知事直轄組織に置かないことで、一定の歯止めをかける仕組みになっている」と指摘。全国で人事課を知事直轄の組織に置いているのは京都府のみで、これは戦後すぐに知事を務めた故・蜷川虎三氏が少数与党の議会で工作を重ねた経緯に由来します。

職員は原則1年で交代する新制度

江崎禎英知事は人事課を知事公室に置く理由について、「知事が知らないところで人事が動くのも、知事だけで人事をやるのも問題。ただ密室化する恐れがあるので、知事公室に所属する職員は、原則全員を1年で異動させる」と説明しました。県人事課も「総務部に属していても人事は知事や副知事の意向を受ける」と、所属する部局による実務の違いはないとしています。

しかし、幹部級を除いて県職員のローテーションは通常3年ほどです。人事課経験のある幹部は「将来を見据えた人材育成となると、人を知ってないとできない部分がある。みんな1年目で人事作業は回らない。ノウハウを知ってる人間がいないと厳しいんじゃないか」と懸念を表明しています。

公益通報窓口の位置付けにも懸念

知事公室には、人事課のほか職員らからの公益通報やハラスメント相談の窓口機能を持つ行政管理課、職員厚生課も所属することとなります。江崎知事は「(人事課を総務部から知事公室に移すことで)くっついてきた。一緒の方がいいと職員側から提案があった」と説明しました。

昨今、兵庫県や福井県、県内の岐南町や池田町などで地方自治体の首長によるハラスメント問題が注目されています。前知事によるセクハラが発覚した福井県の特別調査委員の報告書は「(窓口で)相談をしていれば、早期に適切な措置が取られていた可能性がある」と指摘しました。

昇名誉教授は「職員からしたら情報が知事に入る前提のため相談しづらく、『知事公室』からは外すべきだ。権力者は自身の権力の強さを認識しないといけない」と強く指摘しました。

組織風土への危機感が改編の背景

江崎知事はこの異例の組織改編を実施した背景について、「誰かが指示したわけでないのに意思決定がゆがみ、本来あってはならないことが起きていた」と、県の組織風土への危機感を語りました。改編の起点となったのは、県のネーミングライツ(命名権)募集に関わる不適切事務と、詐欺罪で起訴された県観光連盟の元職員に関わる問題です。

2024年度に県が行った岐阜メモリアルセンター内施設の命名権募集では、本来は外部識者でつくる審査委員会で応募を審査しなければいけないのにもかかわらず、県の判断で3件の応募を委員会の審査対象から外していました。

県観光連盟の問題では、元職員の関口真恵被告が当時の県幹部らと懇意であることを自称し、県職員に予算執行を要求。従った県職員が未納入の物品を納入済みとするなど、不適切な会計処理が行われていたと県の監査が指摘しました。

いずれも2025年2月の知事交代前の出来事で、江崎知事は「関係者や担当者もおかしいと思っているのに正されない状態が続いてきた」と指摘。県の中枢組織である人事課を知事公室において原則1年で異動させることで、「特定の人だけが関わる形を排除しつつ、透明性と風通しを担保できる」と狙いを説明しています。