松本のスーパー「デリシア」、納入業者従業員1100人を無償派遣で警告
長野県内で食品スーパーを展開する「デリシア」(本社・松本市)が、改装開店や売り場変更の準備のために納入業者の従業員を無償で派遣させていた問題で、公正取引委員会は2月26日、独占禁止法違反(不公正な取引方法)の恐れがあるとして、再発防止を求める警告を行いました。この措置は、同社の行為が「優越的地位の乱用」につながる可能性があると判断されたものです。
無償派遣の実態と業者側の苦悩
公取委の発表によると、デリシアは遅くとも2022年4月から2025年7月までの間、県内に展開する約60店舗の改装開店や売り場変更の際に、食品メーカーなどの納入業者約180社に対し、従業員計約1100人を無償で派遣させていました。多い時には一度に200人を超える派遣を要請していたことも明らかになりました。
興味深いのは、同社が業者側に派遣費用の請求書を配布していたものの、実際には請求が行われていなかった点です。公取委の調査に対して、業者側は「他社も日当を請求しておらず、自社だけ請求はできない」と述べ、さらに「今後の取引に影響が出ないか心配で要請を断れなかった」と証言しています。この発言は、納入業者がスーパー側の優越的な立場に圧迫されていた実態を浮き彫りにしています。
公取委の判断と企業の対応
公正取引委員会は、デリシアのこうした行為が独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」に該当する恐れがあると判断しました。優越的地位の乱用とは、取引上の優位性を利用して不当に有利な条件を押し付ける行為を指し、市場の公正な競争を損なうものとして規制されています。
公取委は早期の問題解決を図るため、行政指導の一環として警告を発出。これに対し、デリシア側は公取委の調査後、既に改善に取り組んでおり、派遣を要請した際には適切な費用を支払っていると説明しています。同社は「警告を重く受け止め、再発防止策に取り組む」とのコメントを発表し、問題の深刻さを認めました。
業界全体への波及効果と今後の課題
この事件は、小売業界における取引慣行の在り方に一石を投じるものとなりそうです。納入業者側が「断れない」状況に追い込まれる背景には、スーパーなどの大規模小売業者が持つ購買力や販路への依存が影響していると考えられます。
公取委の警告は、単にデリシア一社に対する指導にとどまらず、同様の行為が他社でも行われていないか、業界全体の監視を強化するメッセージとも受け取れます。公正な取引環境の維持は、消費者の利益にも直結する重要な課題です。
今後、デリシアが公約した再発防止策の具体的内容や、その実施状況が注目されます。また、他の小売業者においても、取引慣行の見直しが進む可能性があり、ビジネスパートナー間の適切な関係構築が求められるでしょう。



