イラン攻撃が日本の航空大手に影を落とす、旅客減の懸念と長期化リスク
米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃を受け、日本の航空大手が旅客減少を強く懸念している。現状では影響は軽微とされるが、戦闘が長期化した場合には欠航便の増加や世界的な航空需要の縮小リスクが高まるためだ。これにより、成長戦略の柱として掲げていた国際線の強化方針が、抜本的な見直しを迫られる可能性も出てきている。
成田空港での式典で地政学リスクに言及
全日本空輸は3日、国際線の定期便就航から40年の節目を迎え、成田空港で記念式典を実施した。井上慎一社長は中東情勢に触れ、「地政学リスクを注視する中、1便1便の安全を守り抜く重責を改めて痛感している」と述べ、緊張感をにじませた。
コードシェア便を除き、全日空は中東への定期便を運航していないため、現時点では運航への直接的な影響はない。日本航空も、羽田空港とカタール・ドーハを結ぶ定期便を8日まで欠航するにとどまっている。
コロナ禍の悪夢再現への懸念が強まる
しかし、今回の事態では、コロナ禍で起きた世界的な需要減という「未曽有の悪夢」と航空大手幹部が表現する状況の再現が、強く意識されている。当面は中東地域の地政学リスクが残るとみられており、警戒感が高まっている。
成田空港の電光掲示板では、3日も海外航空会社の中東行きの便で「欠航」の文字が並んだ。中東の空港は欧州やアフリカへ向かう乗客が乗り継ぎで利用するケースが多いため、欧州旅行の減少も懸念される要素だ。
国際線成長戦略に新たなリスク
日本航空は国際線の旅客便の運航規模を2030年度までに25年度比1・3倍にする経営ビジョンを掲げている。全日空の親会社であるANAホールディングスも、国際線の事業規模を1・3倍に拡大すると中期経営戦略に盛り込んだ。
両社は国内線が実質的な営業赤字に陥る中で、国際線を成長戦略の柱に据えていたが、今回の事態が新たなリスクとして浮上し、計画の見直しを迫られる可能性がある。
燃料費増加が収支悪化に直結
燃料費の増加も大きな懸念材料だ。国際線では燃料価格に応じて運賃に上乗せできる「燃油サーチャージ」があるが、国内線にはこの制度がない。日本航空は27年4月から国内線での導入を検討しているが、当面は燃料費の増加がそのまま収支悪化に直結する状況が続く。
航空経営研究所の稲垣秀夫氏は、「戦闘の長期化による旅行や出張の減少が懸念される。燃料費は航空会社の費用の2~3割を占め、収支への影響が大きいため、別の費用削減を迫られるだろう」と指摘している。
航空業界は、地政学的な緊張が高まる中、安全確保と経営安定の両立に苦心する日々が続きそうだ。旅客の安心を第一に据えつつ、変動する国際情勢に柔軟に対応する姿勢が求められている。



