第一三共の奥澤宏幸社長兼CEOは、今年5月に決算と中期経営計画の発表を延期したことについて「疑念を抱かせてしまった。大変重く受け止めている」と語った。同社は2035年までにがん領域で世界トップ5入りを目指す壮大な目標を掲げており、その正念場をどう乗り越えるのかが問われている。
想定以上に成長したエンハーツ
奥澤社長は、25年度までの5年間、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」という企業像を描いて取り組んできたとし、「この目標は、幸いにも実現できたのではないか」と振り返る。売上収益1.6兆円、がん領域だけで6000億円以上という目標に対し、結果は売上収益2兆1230億円、うちがん領域は9540億円と、いずれも大幅に上回った。
この成長の原動力は、初の抗体薬物複合体(ADC)である抗がん剤「エンハーツ」だ。奥澤社長は「ほとんどエンハーツがもたらしたと言っていい」と語る。エンハーツは、乳がん治療において「HER2陽性」患者への有効性と安全性を示したことに加え、従来「HER2陰性」と分類されていた患者を「HER2低発現」「超低発現」と細分化する臨床開発を行い、新たな治療選択肢を提供したことが大きく伸びた背景にある。
中計目標は「確度が高い数字」
2番目のADC製品である「ダトロウェイ」も25年に発売し、順調に立ち上がっている。さらに、独自のプラットフォーム技術「DXd-ADC」を活用した製品群の開発を進めており、臨床開発中のものを含めると7つのADC製品群がある。
今後は、30年度までに売上収益3兆円、がん領域だけで2.3兆円、営業利益6000億円を目指す。ダトロウェイの大型化を左右する重要な試験結果の判明が近づいており、後期段階の複数の臨床試験が同時並行で進んでいる。



