ヘリウム供給の深刻な不安が事業者を直撃 医療と半導体産業に影
医療機器のMRIや半導体製造に欠かせないヘリウムの供給不安が急速に高まり、国内では代替調達の動きが活発化している。背景には、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が長期化し、輸入の約4割を占める中東カタール産の供給が激減していることがある。この状況により、5月以降に深刻な不足が生じる恐れが指摘されており、産業界に大きな波紋が広がっている。
政府の見通しと民間の懸念の乖離
経済産業省は、在庫を活用すれば当面の供給は可能だと説明し、さらに米国産の調達にめどが立ったとして、「中東からの輸入と同程度の量を確保できる見込み」と公表した。しかし、民間事業者の間ではこの見通しに対して強い懸念が広がっている。中東情勢の悪化を受けて、一部の国内企業では既に販売を制限する動きが出始めており、供給網の脆弱さが浮き彫りになっている。
ヘリウムの重要性と用途
日本産業・医療ガス協会によると、ヘリウムは天然ガスの副産物として産出される気体で、その特性から極めて重要な役割を果たしている。沸点がマイナス269度と極めて低く、液化ヘリウムの約7割は病院のMRIを低温に保つために利用されている。また、気化したヘリウムガスは半導体の製造工程においても不可欠なガスとして使用されており、現代の医療と先端技術を支える基盤となっている。
輸入構造と今後の課題
貿易統計によると、日本は2025年にヘリウムの約60%を米国から、約37%をカタールから輸入しており、供給源が限られていることが課題だ。政府は米国産への依存度を高める方針を示しているが、長期的な安定調達には依然として不確実性が残る。事業者からは、価格の高騰や調達遅延への不安の声が上がっており、産業全体のサプライチェーン再構築が急務となっている。



