低価格中国製LFP電池が台頭、日本は官民連携で世界シェア20%奪還へ
中国製LFP電池台頭、日本は官民連携で対抗

低価格中国製LFP電池が世界市場で台頭、日本は官民連携で対抗策

安全性が高く低価格なリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を搭載した製品が、自動車業界を中心に急速に浸透している。特に中国企業が開発をリードするLFP電池は、国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、欧州製より3割以上、米国製より2割以上安い価格競争力を持つ。日本ではこれに対抗するため、官民連携による蓄電池産業の競争力強化が進められている。

岐阜市で自動運転EVバスが実用化、LFP電池の採用が鍵に

岐阜市では2026年1月17日、自動運転EVバス「ギフハートバス」の新車両がデビューした。試乗した柴橋正直市長は「まるで人が運転しているかのようにスムーズに自動走行できる」と評価。3月までに中心市街地で国内初の「レベル4」自動運転を実現させる予定だ。

このバスに搭載されているのがLFP電池である。名古屋市中川区で二輪車用バッテリーを販売する「Second(セコンド)」は、昨年からLFP電池の新商品を扱い始め、営業部長の柿本三十四氏は「高機能化にも向いている」と自信を示す。自動車大手のスズキもLFP電池搭載EVを2026年1月に国内発売している。

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中国企業が開発をリード、100万円切るEVも登場

LFP電池開発では中国企業が先行している。中国ではLFP電池を搭載し、日本円で100万円を大幅に切るEVが販売されている。トヨタ自動車や日産自動車も中国合弁企業で現地向けアフォーダブルEVを発売し、人気を集めている。

特にBYDが開発したLFP電池「ブレードバッテリー」は熱安定性などに優れ、業界で注目を集める。中国電池大手CATLは2025年、10分で航続距離478キロの充電が可能なLFP電池を発表するなど、開発を加速。自動車大手のステランティスは、CATLとスペインにLFP電池生産の合弁工場を建設中だ。

名古屋工業大学で電池研究を専門とする中山将伸教授は「LFP電池は電圧が低くエネルギー密度がやや小さいが、数多くつなぐことで電圧は上げられる。何より安いことが魅力だ」と指摘する。

日本政府が蓄電池を「特定重要物資」に指定、世界シェア20%目標

世界の車載電池の6割以上を中国企業に占められる状況に、日本でも危機感が高まっている。日本政府は2022年、蓄電池を経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資」に指定。経済産業省は2025年6月、二次電池関連業者らを集め「蓄電池産業戦略推進会議」を開催し、「あらゆる施策を総動員して必要な投資を進め競争力を向上させる」ことを確認した。

2030年までに日本勢の蓄電池シェアを世界で20%に高める目標を掲げている。電池サプライチェーン協議会(BASC)の成瀬悟郎・業務執行理事は「蓄電池は産業の『心臓』だ。リチウムイオン電池発祥の国として先頭を走り続けているとの自負がある」と述べ、業界内の協力強化で日本の存在感回復を図る考えを示す。

量産化の壁に直面する国内企業、経験と勘が重要に

リチウムイオン電池生産のスタートアップ企業「テラワットテクノロジー」の川口竜太・戦略担当バイスプレジデントは、電池量産の難しさについて「リチウムイオン電池はメカニズムが原理として未解明な部分があり、トライ&エラーの領域が開発にも生産にも残っている」と説明。

「構成元素や分子が多く、その反応や3Dナノ構造まで考えるとかなり複雑だ」と指摘する。新工場を稼働させても歩留まり(良品率)が50%程度から始まり、数年かけて数値を上げて利益が出るように改善するのが普通で、「資金がなくなる前に事業を軌道に乗せるのは大変だ」と語る。

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日本総研調査部の三浦有史・主席研究員は「低コストのLFPが、車載電池のメインストリームになるのでは」と予測。強い価格競争力を持つ中国製LFP電池が日本のEVにも広がる可能性がある中、日本電池産業は正念場を迎えている。