空飛ぶクルマ実用化目前 大阪万博で実証進む「バーティポート」の課題と展望
大阪・関西万博でのデモ飛行が大きな注目を集めた「空飛ぶクルマ」は、もはや夢物語の領域を超え、現実的な社会実装のフェーズへと着実に進展している。この「100年に1度の移動革命」とも称される新技術の実用化に向けて、地上側のインフラ整備にはどのような課題が存在するのだろうか。万博会場に離着陸場を設置したオリックスのモビリティイノベーションチーム長、杉山良氏(49)に詳細な話を聞いた。
バーティポートとは何か ヘリポートとの違いと整備の苦労
杉山氏はまず、空飛ぶクルマの基本概念について説明する。「電動の垂直離着陸機であり、自動運転技術との親和性が極めて高いことが特徴です。将来的にはパイロットが不要になる可能性も指摘されています」と語る。この車両は地上約100~150メートルの高度を最高時速300キロ以上で飛行し、優れた静音性を備えているため、注意深く観察しないと空を移動している様子が分からないほどだという。
離着陸場は「バーティポート」と呼ばれ、基本的な構造は従来のヘリポートと類似している。しかし、給油設備の代わりに充電設備を備える点が主な相違点である。万博会場への設置プロジェクトは会期の約3年前に着手されたが、竣工は2025年3月とぎりぎりのタイミングとなった。国の整備指針の発表が遅れたことや、急な仕様変更の要請が発生するなど、数多くの困難に直面したと杉山氏は振り返る。
万博会期での実証実験 安全確保とAI活用の取り組み
半年間に及ぶ万博会期では、具体的な実証活動が精力的に行われた。最終的には3機種の空飛ぶクルマが飛行を実施し、複数の機種を長期間にわたって適切に受け入れられるかどうかの検証が進められた。杉山氏は「地べた側である我々と運航会社との業務フローの確認を徹底し、周辺及び上空の風速など安全に関わる重要なデータの収集に注力しました」と説明する。
さらに、ポート内の異物を人工知能(AI)で検知するシステムの試験運用も実施された。このシステムは、落とし物の携帯電話なのか、単なる落ち葉なのかを識別する能力を有しており、将来的にはロボット掃除機のような装置で異物を自動除去するまでの発展が期待されている。杉山氏は「将来的には完全な自動化を目指したいですね」と展望を語った。
オリックスがバーティポート整備に参画する背景と今後の展望
なぜオリックスがバーティポートの整備に積極的に取り組んでいるのか。杉山氏は、同社が持つ幅広いインフラ事業の経験と、新たなモビリティ分野への戦略的投資が背景にあると指摘する。空飛ぶクルマの実用化は、都市交通の混雑緩和や地方の移動手段の革新など、社会全体に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。
2026年以降の商用化に向けては、規制の整備やコスト削減、さらなる安全性の向上が重要な課題となる。杉山氏は「万博での実証で得られた知見を活かし、より現実的なサービス展開を目指していきます」と意欲を表明。空の移動革命が現実のものとなる日は、確実に近づいている。



